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<27>厳しい注意 求める「秩序」

2021年5月12日
無意識に従っている秩序って

無意識に従っている秩序って

対立、いじめの原因にも

 【Q】 小学校低学年の子を持つ親です。子どもが学校で他の児童から強い口調で細かく注意されることが多いようで、嫌がっています。確かにぼんやりしていることが多いのですが、体育で帽子をかぶるのを忘れた程度で「帽子をかぶらないといけないんだよ」と強い口調で言われ、まるで「自粛警察」のようで気になります。

 【A】 他者に何かを注意することは難しいものです。注意しないと問題は解決できません。でも、「自粛警察」のようなやり方は、反感や対立を助長し、いじめにつながる可能性もあります。
 他者に注意すべきかどうか判断を要する場面はいろいろありますが、ここではルールを守らない人がいる場面を考えてみます。
 一般にルールを作るのは、自分や他者の安全を守るため(「危険な場所への立ち入り禁止」「暴力の禁止」など)という場合と、公共の秩序を保つため(「マナーの順守」など)という場合があります。誰かの安全を保つためのルールの違反は絶対に注意が必要ですが、公共の秩序を保つためのルールの違反に対しては、「秩序」をどこまで求めるのかによって注意のしかたが変わってきます。公園で子どもたちが声を出すのは問題視されませんが、クラシックのコンサート中に声を上げるのは秩序を乱すと思われます。このように、秩序は場面によって異なります。
 公園やコンサートのマナーはルールがなくてもわかりやすい秩序ですが、ルールができたために人工的に生じる秩序もあります。極端な例を挙げると、ナチス政権下のドイツではユダヤ人の存在そのものを罪であるとみなす秩序が作り出されました。このような悪法による秩序は、尊厳を傷つけられる人を生み出します。
 われわれが無意識に従っている秩序の中には、悪法の秩序に近いものが意外にたくさんあります。コロナ禍における自粛要請でも、感染リスクの高い場面は他にもあるのに、飲食店だけを特に問題視するような秩序ができました。秩序が一度できると、それを乱す人を狙って攻撃する人が出てきます。それは対立や弱い者いじめにつながるだけで、問題解決どころか悪化の元凶となり得ます。
 子どもは身近な大人に影響されます。「自粛警察」まがいの行動をとる子どもたちの裏には、同様の行動をとる大人が存在します。それは親かもしれませんし、教師かもしれません。対立や弱い者いじめにつながるような秩序を作らないこと、そしてそのような秩序を作ろうとする人に対してこそ、適切に注意して食い止めることが重要です。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

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