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<162>親だけでは育てられない

2020年03月25日

 子どもに関わる専門家だからといって、自分の子育てが模範的なわけではない。
 僕には娘が1人おり、現在9カ月の孫娘が1人いる。乳幼児の頃の娘にとって、僕は「たまに遊びにくる『パパ』という名前の人」くらいの存在だった。出勤のときに娘から「バイバイ、また来てね」と言われたり、車を指さして「パパのおうち」と言われたりしたものだ。それでも一緒にいるときはいつも遊んでいたので、決して悪い関係ではないと思っていた。
 ところが、中学生になった頃から、なぜか娘との会話がまったく続かなくなった。話しかけても「うん」「ううん」くらいしか返事がない。何を考えているかわからないから、次の話題を思い浮かべることができない。外出しても、横に並ばずに親の5メートルほど後ろからついてくるような感じだった。
 高校生になると、ときどき勉強を教えてくれと頼まれるようになった。そのときだけはにこやかでよくしゃべるが、用が済むとまた素っ気なくなる。高校3年生のある日、遠い地方の大学を受けると急に言い出し、親が気持ちの整理をする間もなく1人暮らしをするようになった。離れて住むと、ふだんは音沙汰がない。たまにフレンドリーなトーンで連絡があるが、そういうときはたいてい何か欲しい物があるときだった。社会人になり、結婚して自分が親になってから、ようやくふつうの会話になってきたように思う。
 こうして振り返ると、よくある子どもの成長の道筋だ。自分では可愛がっていたつもりでも、思春期には距離をとられたし、その頃はどう接したらよいかわからず戸惑ったものだ。ふだん他人に助言をしているくせに、自分の子どもとなると冷静になれない。専門家といってもそんなものだ。
 いくら専門知識が多くても、子育ては親だけで完結できない。誰かに助言を求めることや、親の代わりに子どもと話してもらうことなどが、子育てでは必要なときがある。子育ての専門家として、皆さんに伝えるべき最も重要なことは、そのことかもしれない。どんな専門家でも、自分の子どもを1人で育てることは難しい。
 2013年7月から連載してきたこのコラムは、今回で一区切りとさせていただく。
 6年9カ月間、162回も続けることができたのは、ひとえに読者の皆様と山梨日日新聞の編集部のおかげである。ありがとうございました。
 4月からは趣を変え、子育てにまつわる質問にお答えする形で再スタートします。これからもお付き合いいただければと思います。
(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

 「ドクター本田のにじいろ子育て」は次回(4月8日)から、本田秀夫さんが子育ての悩みにQ&A形式で答える「実践! ドクター本田のにじいろ子育て」にリニューアルします。
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