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<161>考えて動けるサポートを

2020年3月11日
右見て、左見て…

右見て、左見て…

 子どもに横断歩道の渡り方を教えるとき、「右を見て、左を見て、もう一度右を見てから渡りましょう」と説明するのが一般的だ。僕は、幼稚園か小学校1年生の頃にこの説明を聞いたとき、「なぜ『右↓左↓右』なんだろう?」と思ったことを覚えている。でも、その理由を学校で教えてもらった記憶はない。
 アメリカやカナダでは、“Look to the left,look to the right,then look to the left again″と教えるそうだ。日本とは逆である。これには理由がある。日本では車が左側通行だから、対面通行の道路を横断するとき、最初は右からくる車に気をつけなければならない。だから、まず右を見て車がいないことを確認し、次に左を見て、最後に改めて右側から車が来ないことを確かめるのだ。逆にアメリカやカナダは車が右側通行なので、確かめる順番は左↓右↓左とするのが合理的だ。
 「車が左側通行の場合、横断者から見て最初に車がやってくるのは右側から」という理屈は、小さな子どもには難しすぎる。それが分からなくても「右↓左↓右」という行動だけ身についていれば、とりあえず事故をある程度は防げる。だから小さい子どもには、まず取るべき行動を教えておけばよい。でも、子どもたちがある程度大きくなって理屈が分かるようになったら、あらためて理由を教えるべきだ。そうしないと、車が右側通行の国へ行っても日本と同じパターン行動を取っていては事故に遭ってしまう。
 このように、小さな子どもに考え方よりも行動のパターンを先に教えるということは、結構多い。トラブルを防ぐためにはやむを得ないことだが、それは動物に芸を仕込むのと変わらないものであって、教育とは言えない。
 考え方を教えずに行動だけを教えることの弊害が最も大きいのが、悪いことをしたときに、反省する気持ちの有無を問わずに謝らせることだろう。子どもの喧嘩やいたずらに対して、すぐに謝らせて、謝ったらそれで終わらせるという人が多いが、そのやり方だと「形だけ謝りさえすればよい」という考えを植え付けかねない。実際、そのような大人が決して少なくない。
 子どもがある程度の理屈が分かるようになったら、行動だけでなく考え方も教えるべきだ。喧嘩などのトラブルが起こったとき、もし相手を傷つけたのであればまず謝ることは必要だが、それで終わらせるのではなく、必ず子どもと一緒に振り返りを行うことが重要だ。将来、自分で考えて判断して行動できる人へと成長するようにサポートするのが、大人の役割だ。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します