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<159>家、クラス以外に居場所を

2020年2月12日

 「居場所」という言葉がある。
 「住んでいるところ、居どころ」というのが元来の意味だが、近年では「今の会社に自分の居場所が見つけられない」のような使い方をされることが多い。この場合は、「その人が心を休められる場所、活躍できる場所」という意味になる。
 いま、子どもの居場所づくりを支援する試みがさまざまな形で行われている。その対象となるのは、親の不在や虐待などで家庭が居場所として機能していない子どもたちや、不登校の子どもたちなどだ。本当なら最も心が休まる場所であるはずの家がそのような場所でないと、子どもは常に緊張を強いられる。日中の多くの時間を過ごす学校で自分の力を発揮できないと、子どもは自分が学校という小社会の一員だという感覚(帰属意識)を得られない。安心した生活や帰属意識を得られる居場所のない状態が続くと、「世の中にはこれだけ大勢の人がいるのに、自分は孤独だ」という疎外感や孤立感を抱くようになり、自信や意欲の低下を招く。
 各地で試みられている居場所づくり支援は、いったん居場所を失った子どもたちを孤立させないように場所と活動を提供する。自分をそのまま受け入れてくれる人たちがいるという安心感や、やりがいを感じられる活動が保証されると、家庭や学校で疎外された子どもたちにとって、そこが貴重な居場所となる。
 しかし、自信が低下し、人の中に入るのに強く緊張するようになってしまうと、場所を提供されてもそこに行ってみようという気持ちになれない子どももいる。いったん孤立感や疎外感を味わってしまってからの居場所づくりには相当な困難を伴うことが多い。
 現代社会で、子どもたちは簡単に居場所を失いやすい。核家族化し、地域社会との接点が減ると、子どもたちにとって学校のクラスが家庭以外の唯一の所属先となりやすい。学校で疎外されたら、子どもたちは他に行き場所がなくなってしまう。
 居場所づくり支援は、居場所を失ってからスタートするだけでなく、まだ居場所を失っていないうちから行うことも重要だ。そのためには、ふだんから家庭と学校のクラス以外にも所属先をもつように意識しておく。複数の居場所があると、どこか一つの居心地が悪くなっても他に居場所が残っているので自信や意欲の低下を防ぎやすい。部活や習い事などは、そのような場所の候補となる。居場所確保のためにも、部活や習い事の内容は好きなことや得意なことにし、参加を楽しみにできるようにしておきたい。
(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します