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<157>年上の子にねぎらいを

2020年1月15日
お兄ちゃんだけど…

お兄ちゃんだけど…

 小さな子どもが2人以上いる家庭で、どうしても子連れで電車やバスで外出しなければならないとき、親にも相当な覚悟が必要だ。大人でも混んだ電車の中で長時間乗っているのはきついのに、まだ小さな子どもにじっと我慢しろと言うのは酷というものだろう。多くの場合、最初に落ち着きがなくなり、手がかかるようになるのは年下の子どもたちだ。そんなとき、しばしば最年長の子どもに対して親たちが発するキラーワードがある。そう、「お兄ちゃん/お姉ちゃんなんだから」だ。
 先日バスの車内で見かけた5歳くらいのお兄ちゃんは、とても健気に頑張っていた。乗ってくるや否や、母親に「お兄ちゃんなんだから」と言われ、窓側の席を2歳くらいの弟に譲らされた。並んで座ってしばらくして弟にちょっとちょっかいを出してしまい、弟が泣いたので叱られた。その後はおとなしく座っていたが、今度は弟が我慢しきれなくなった。椅子から降りて父親に抱っこをせがんだり、「降りたい」と言い出して困った父親がバスの中を抱っこして少し歩いて気を紛らわせたり、対応にかかりきりになった。それでもお兄ちゃんは座っていたが、さすがに退屈したらしく、足を椅子の上に乗せるなど、ゴソゴソ動き始めた。するとそれを見た母親がすかさず「足を乗せちゃだめ」と叱ったので、お兄ちゃんはしばらくの間、ちょっとふてくされていた。
 結局、家族がバスを降りるまでの間、両親は落ち着かない弟の対応に手一杯。お兄ちゃんはオモチャも何も持たない状態で30分ほど座り続けており、ほとんどの時間はむしろちゃんと座っていたのに、何度か姿勢を崩したときだけ叱られる始末。弟はじっとしていなかったのに一度も叱られず、「なぜ自分だけが何度も叱られるのだろう」と思っても仕方のない状況だった。
 長男/長女で、子どもの頃にこのような体験をした人は、少なからずいるのではないかと思う。僕も長男だったから、多少そのような思いをもった体験を記憶している。子どもの立場から見ると、まだ小さいのにちょっと年上というだけでずいぶん背負わされるものが大きいように思える。親も余裕のない状況なので仕方ないとは思うが、年上の子にただ責任を負わせるだけではなく、頑張りに対するねぎらいの言葉があると、真の責任感が育まれるかもしれない。バスに乗っていたお兄ちゃんも、せめてちゃんと座っているときに「頑張ってるね」「えらいね」などの一言があると、うれしかったのではないか。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は、次回は29日に掲載します