ホーム
最新
山梨
全国・海外
スポーツ
Eye
安心・安全情報
おくやみ・催し・人事
写真・動画
分かる・知る
山梨日日新聞社インフォメーションサイト

<153>ルールを学ぶ適切な時期

2019年11月13日
我慢できない!

我慢できない!

 先日、パン屋の店内でこんな場面を目撃した。
 3歳くらいの女の子を連れた夫婦がパンを選んでいた。女の子は両親のそばを離れ、陳列されたパンに手を伸ばして素手で取ろうとしていた。それに気づいた父親が叱ると、その瞬間だけ女の子は手を引っ込めるが、しばらくすると別のパンにまた手を伸ばす。そのたびに父親は叱る。3度目から、父親はすごい剣幕で怒鳴りつけるようになった。それでも女の子はやめない。それを見た母親は、「あらー、そんなことしたら怒られちゃうわよ」と軽い感じで言いながら、買い物を続けていた。
 子どものしつけ方に問題があると感じる人が多い場面だと思う。では、あなたならどうするだろうか?
 「私なら、もっと上手なやり方で注意する」と考えた方がいたら大変申し訳ないが、問題となる行動を注意するという考え方は、子どもの虐待につながりやすい。すごい剣幕で怒鳴られても子どもが同じ行動を繰り返すということは、商品のパンに手を出さないことを学ぶのが時期尚早ということだ。現時点では、どんなに注意法を工夫しても、店内でパンを目にしたこの女の子は手を出すだろう。それに気づかずに子どもを注意し続けていると、親の苛立ちがつのることが予想できる。やがては、強い罵声を浴びせることが日常的となり、暴力も加わる可能性が出てくる。
 母親が「怒られちゃうわよ」と言っているのも気になる。父親が母親の育て方を「甘い」と非難し、しつけの見本を示すと言って子どもを虐待していた事例では、母親が子どもにこのような声かけをすることがある。
 この女の子に対してとるべき方針は、「売り物のパンに手を出してはいけない」というルールを理解し実践できるようになるまで、パン屋の店内に子どもを入れないことだ。店に連れて行かないか、連れて行ったとしても、両親のどちらかが店の外で子どもと一緒に待っていればよい。そうすれば、全く叱らなくて済む。
 もう少し上の年齢になってルールが理解できるようになったかなと思った頃に、あらかじめ「パンを触ってはだめだよ」と伝えてから入店してみる。店内で子どもが商品に手を伸ばしたら1度注意してみて、それでも繰り返すようであれば、ルールを守る力がまだ育っていないと判断し、またしばらくは連れて行かない。そのうち適切な時期が来れば、叱らなくても子どもはルールを理解し、守れるようになる。
 今月は、児童虐待防止推進月間だ。繰り返し叱ることは虐待への一歩であることを知っておいていただきたい。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します