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<152>親の望み 子どもに重圧

2019年10月23日
どこに行くのかな?

どこに行くのかな?

 親が、かなえられなかった自分の夢をわが子に託すことがある。
 たとえば、プロ野球選手になれなかった父親が、子どもに夢を託して小さいときから野球チームに入れるなどだ。自分が合格できなかった大学にわが子を入学させることを目指して、幼少期から進学塾に子どもを通わせるという親もいる。
 このような親のもとで育てられた人たちが、しばしば思春期、青年期に精神科医を受診する。はじめは親の期待に応えられないことの自責の念に耐え切れず。しかし、やがてそれは親に対する強い恨みや被害者意識に変わっていく。
 子どもが野球チームに入ることや進学塾に通うことが悪いとは言っていない。もしそれが、子ども本人の希望であれば、むしろ良いことである。しかし、親の夢を託されてとなると、話が全く違う。子どもは親ほどには野球にも進学にも興味がないかもしれない。あるいは、親が期待するほどには野球や勉強の才能がないかもしれない。子どもの興味や能力は、他のことに向いているのかもしれない。自分に向いている習い事などをやれば、もっと意欲的に取り組めて伸びるかもしれないのに、それほど興味も才能もない習い事をさせられて、挫折した人たちを、精神科医や心理士たちはたくさん見てきている。
 親がかなえられなかった夢を託す場合、親が子どもに「自分の夢をかなえてほしい」とはっきり伝えていることが多い。そう言われると、子どもは最初からいやだとは言いにくい。はっきり言わない場合でも、親の態度などから子どもには伝わってしまうものだ。だから、「親の願いではない。子ども自身が望んでやっている」と親が言っていても、それが子どもの本音ではない可能性を考えておく必要がある。
 親のかなえられなかった夢をかなえるための習い事や勉強の領域が、偶然にも子どもにとって好きなこと、得意なことである場合がある。中には子どもが才能に恵まれ、親のかなえられなかった夢を実現できたというケースもある。それでも、「親の夢を子どもがかなえた」ということを美談のようにメディアが報じるのは、慎重でならなければならない。たまたま子どもがその習い事が好きだったから、そして親の期待以上に才能があったからよかっただけである。
 それよりも、親の期待を常に感じながら、好きにもなれないし能力的にも向いているとはいえないことに努力を続けさせられて、いつしか心を病んでしまう子どもの方がはるかに多いことを、知っておいていただきたい。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します