ホーム
最新
山梨
全国・海外
スポーツ
Eye
安心・安全情報
おくやみ・催し・人事
写真・動画
分かる・知る
ビジネス

記者が見た被災地の現状~台風禍の千葉南部

2019年09月20日 11時05分
真っ二つに折れ曲がった電柱=千葉県鋸南町

真っ二つに折れ曲がった電柱=千葉県鋸南町

台風15号の影響で倒壊したガソリンスタンド=千葉県館山市

台風15号の影響で倒壊したガソリンスタンド=千葉県館山市

強風により建物の壁がはがれていた=千葉県館山市

強風により建物の壁がはがれていた=千葉県館山市

強風で鉄骨がむき出しになったビニールハウス=千葉県南房総市

強風で鉄骨がむき出しになったビニールハウス=千葉県南房総市

停電が続く住宅。天井にはぽっかりと穴が開いていた=千葉県鋸南町

停電が続く住宅。天井にはぽっかりと穴が開いていた=千葉県鋸南町

多くの住宅の屋根がブルーシートで覆われていた=千葉県鋸南町

多くの住宅の屋根がブルーシートで覆われていた=千葉県鋸南町

多くの住宅で瓦が飛び、住民は片付け作業に追われている。仮置き場となった市役所駐車場には瓦が山のように積まれていた=千葉県南房総市

多くの住宅で瓦が飛び、住民は片付け作業に追われている。仮置き場となった市役所駐車場には瓦が山のように積まれていた=千葉県南房総市

自衛隊による無料風呂が開設され、多くの住民が訪れた=千葉県南房総市

自衛隊による無料風呂が開設され、多くの住民が訪れた=千葉県南房総市

停電が続く地域では携帯電話を充電しようとコミュニティーセンターを訪ねる住民も=千葉県南房総市

停電が続く地域では携帯電話を充電しようとコミュニティーセンターを訪ねる住民も=千葉県南房総市

南房総市職員から物資を受け取る住民=千葉県南房総市

南房総市職員から物資を受け取る住民=千葉県南房総市

記者の車から支援物資を降ろすボランティア=千葉県南房総市

記者の車から支援物資を降ろすボランティア=千葉県南房総市

記者の車から支援物資を降ろすボランティア=千葉県南房総市

記者の車から支援物資を降ろすボランティア=千葉県南房総市

 台風15号の影響で電力網に壊滅的な被害を受けた千葉県南部。大規模停電や断水でライフラインが遮断され、住民からは「いつまで続くのか」と、いら立ちがピークに達している。南房総市出身の本紙記者が14、15の両日、現場を歩いた。〈松本飛勇馬〉

 13日午後10時ごろ、子ども用のおむつや飲料水、カップラーメンなど、同僚と集めた物資をワゴン車いっぱいに詰め込んで千葉県へ出発した。最寄りのインターチェンジに着いたのは14日午前1時すぎ。半年ぶりに地元に帰ってきた喜びもつかの間、停電で真っ暗になったコンビニエンスストアが目に入った。「そうか、まだ電気が止まってるんだ」

 14日午前10時ごろ、停電が続く南房総市富浦町多田良地区に着いた。停電で携帯電話の基地局が稼働していないため、記者のスマートフォンの画面にも「圏外」の2文字が並んでいた。

 住民同士のやり取りが聞こえてきた。「何か困ったことがあったら言ってね。すぐ来るから」。1人暮らしの花輪ぎんさん(88)に、近所に住む花輪美代子さん(46)が声を掛けた。美代子さんは「いつも助けてもらっているから。困ったときはお互いさまですよ。すぐに屋根を直しに来るからね」と言って、ぎんさんに屋根を覆うためのブルーシートを手渡した。

 停電で携帯電話やインターネットがつながらず、テレビも見られない。情報が届かない状況の中、毎朝届く新聞が住民の頼りとなっていた。千葉県南部の4市町(館山市、南房総市、鴨川市、鋸南町)を管轄する「房州日日新聞」。同新聞社は停電で輪転機が使えなくなり、約100キロ離れた印刷業者に外注。担当者は「普段は4ページだが2ページで発行した。困っている住民に何とか情報を届けることだけを考えた」と語る。

 9日の台風通過後は連日30度を超える真夏日に。エアコンはもちろん、扇風機も使用できない。南房総市和田町黒岩のパート沼里宏菜さん(22)は、息子(1)と共にコンビニの駐車場に車を止め、夜を明かしたこともあったという。「自宅はエアコンが使えず、暑くて息子の寝付きが悪かった。風呂にも入れないのであせもが出てきた。狭いけれど、エアコンで涼しい車内で過ごした方が快適だった」

 断水している地域もある。南房総市秘書広報課によると、浄水場から水をくみ上げるポンプが使用できないことなどが原因。停電の影響とみられ、同課の担当者は「想定外の被害で混乱している。停電が復旧しない限りは水を供給できない」と話した。

 15日午前は物資を届けるため、南房総市久枝へ向かった。独居老人や幼い子どもがいる家庭に物資を届ける活動をする団体「i.PLANNER」に託し、物資を届けてもらうことにした。代表を務める渡辺由喜さん(32)は「行政が物資を配布していることを知らない住民もいる。一人でも多くの人に安心してもらいたい」と語った。

 鋸南町は、強風により多くの家屋が被害を受けた。台風が通過して7日がたっていたが、真っ二つに折れた電柱が放置されたままだった。近くに住む会社員村井清幸さん(38)は「折れた電柱の影響で60軒くらい停電している」という。「ここを見てほしい」。そう言われて平屋建ての住宅に入った。壁ははがれ、天井にはぽっかりと穴が開いていた。

 「房総は災害が起きなくて住みやすい」。記者は小さな頃からそう教えられてきた。ライフラインや情報が長期間、寸断される状況はほとんどの住民にとって初めての経験で、住民は「まさかこんなことになるなんて」と肩を落としていた。