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<149>我慢は目標達成のため

2019年09月11日

 以前にもこのコラムで書いたが、我慢には「諦めない我慢」と「諦める我慢」とがある。
 諦めないで我慢する経験は、ときに子どもを大いに成長させる。何かの目標を持ったとき、それを達成するためのハードルが現れたとしよう。そのハードルを克服しようとして自ら進んでつらいことでも我慢するのは、目標がその子の能力で実現可能であり、かつ達成したいというモチベーションが高い場合である。逆に、我慢できないときは、目標が高過ぎる、目標が本人にとってそれほど大事なものではない、目先の誘惑に負けてしまう、などの要因が考えられる。
 一方、毎日親から理由もなく殴られている子どもは、諦める我慢を強いられている。その状況から脱することができないと諦めて、殴られてもじっと我慢するしかない。我慢すればするほど、先の希望が持てなくなっていくので、子どもが心に傷を負う可能性がある。おやつの時間以外にはお菓子を欲しがっても我慢させるというような「諦める我慢」もある。しかし、おやつの時間になれば確実にお菓子がもらえるという見通しが与えられれば、子どもにとってはおやつの時間までの「諦めない我慢」になる。
 よく、我慢することを教えたがる人たちがいる。そのような人たちは、しばしば目標や見通しを明確にせずに、ただ我慢だけを押しつけがちである。これは、諦める我慢になることが多い。自分の意思ではどうにもならない八方ふさがりの状況で黙って我慢し続けることを、「泣き寝入り」という。我慢を教えようとすると、結果として、どんなにつらくても泣き寝入りすることを身につけさせることになってしまう可能性がある。
 何かを達成した人のインタビューで「我慢が大事」という話題が出ることがあるが、それは諦めない我慢の方だ。なぜその人は諦めずに我慢できたのか。それは、よい目標を持つことができ、それを達成したいという意志が強かったからだ。子どもが我慢を覚えることはたしかに重要だが、それは泣き寝入りとは異なる。「我慢しろ」と命令すると、泣き寝入りを強いることにつながりかねない。大人がやるべきなのは、「こうすれば目標を達成できる」、「この時間になれば要求が満たされる」という展望を示すことであり、その結果として、目標や展望に向かって諦めずに我慢することを子どもは自発的に選ぶのである。大人の期待ほどに子どもが我慢できない場合は、目標設定や見通しの与え方を見直すべきだろう。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します