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<142>褒めても“次”は期待しない

2019年05月22日

 子どもが何かを頑張ったとき、新しいことができるようになったとき、他の人から感謝されるようなことをしたときなどに、「えらいね」などと褒めるのは、とてもよいことだ。褒められると、子どもにとっては次回からもそれをやろうとする動機づけになることが多い。
 しかし、褒められたからといって、次も必ずそうするとは限らない。誰かからお菓子をもらった子どもが、その半分を弟に分けてあげたとすると、その子は褒められるだろう。でもその子は、その日はおなかがいっぱいだったのかもしれない。別の日にお菓子をもらったときには、全部一人で食べてしまうことだってある。すると、なぜか叱られるのだ。以前は自分にもらったお菓子を一人で食べても叱られなかったのに、一度たまたま何げなく弟に半分あげたら、それを機に「もらったお菓子は弟に分けるのが当たり前」という雰囲気になり、それをしないと叱られるようになってしまう。そんなことが、いろんな場面で起きていないだろうか?
 大人たちは、自分たちの予想や期待以上に子どもが何かをしたときに褒めることが多い。一度でも何かをやって褒めたら、そのことについてつい無意識に「できて当たり前」という方向に予想や期待のハードルを上げてしまう。すると、できないときのダメ出しが増え、子どものモチベーションはむしろ下がる。
 あらゆる方面のことについて常にアンテナを張りながら向上を目指し続けることは、誰にもできない。ヒトのエネルギーは限られているので、何かを頑張ってエネルギーを使うと、その代わりに他の何かで少し手を抜かなければならない。子どもの場合、やる気、集中力、気分、食欲、眠気などの調子の波が大きい。今回は褒めるようなことをしても、次はできないかもしれない。いや、できなくて当然ということの方が、圧倒的に多い。
 子どもが何かをやって褒めたとして、次にそれをやらなかったときに「どうしてやらないのか」という気持ちを持つことは、ダメ出しや子どもの意欲低下につながるリスクがある。何かで褒めることがあったとしても、次回以降にそれを標準ラインとするのではなく、要求水準は元のままにしておいてよいことは、結構たくさんあるのではないかと思う。前回はお菓子を弟に分けてあげた子どもが、次のときはお菓子を一人で食べてしまったとしても、放っておいてよい。大人は「できなくて当たり前」と考えておく方が、長い目で見るとかえって伸びることが多いように思う。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します