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<134>「目標」はノルマではない

2019年01月23日
やる気が出る?

やる気が出る?

 よく学校では、「教室をきれいに使おう」などと目標が掲げられる。
 適切な目標をもつと、それに向かってやる気が湧く。だから、目標を立てることは悪くない。しかし、学校(特に公立の小中学校)では、目標を作る際に気をつけなければならないことがある。それは、「目標達成をノルマにしてはならない」ということだ。
 会社などでは、月間の売上額などの「目標」を、「ノルマ」とほぼ同じ意味で使うことがある。だから、学校で目標をノルマと同じ意味で用いることに、違和感を覚えない人が多そうだ。しかし、会社と違い、公立小中学校は、どの学校に行くか、どのクラス、どの担任になるかについて、子どもたちに選択の自由がない。そこで出される「ノルマ」は、多少なりとも自分の意志で働いている会社のノルマとは、わけが違う。個別の状況に合わせて目標を立てるのはよいが、クラス全員が達成すべきノルマとして目標を与えるのは、問題だ。
 僕が関わる子どもたちの中には、生まれつきどうしても頻繁に忘れ物をしてしまう子どもがいる。あるとき、そんな一人であるAくんが通う学校で、担任がクラスの月間目標を「忘れ物ゼロ」にすると宣言した。でもAくんは早々に忘れ物を繰り返し、先生だけでなくクラスメートからも非難されて、学校を休みがちになってしまった。
 担任は、忘れ物をしないよう注意する習慣を教えたかったのだろう。しかし、全員にノルマとして目標を強要すると、達成が難しい一部の生徒に他生徒が否定的な感情を抱いてしまう。これは結果的に、「担任も加担したいじめ」に発展する。
 学校で生じるいじめでは、世間一般に考えられているような「意地悪な生徒が善良だが弱い生徒をいじめる」という構図ではないことが、しばしばある。個々の生徒の事情を考慮せず一律に「目標」という名のもとにノルマを課して、達成できない生徒を叱責するようなクラス運営をすると、ノルマを守れた多数派が正義の味方気どりで「違反者」を非難し、それがいじめにつながる。公立の小中学校で、このようないじめの話を聞くことは、決して珍しくない。
 「忘れ物ゼロ」だけでなく、「給食の完食」、「大縄跳び連続何回」など、全員が確実に達成できる保証のないノルマはすべて、いじめの発端となる。中でも、「みんな仲良くしよう」という目標が最悪だ。少数派の意見を言う子どもや、衝突しやすい子どもが、ノルマを達成できない悪役としていじめ被害に遭いやすくなるのだ。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します