ホーム
最新
山梨
全国・海外
スポーツ
Eye
安心・安全情報
おくやみ・催し・人事
写真・動画
分かる・知る
ビジネス

<130>本人の「やりたい」尊重

2018年11月28日

 次のような親子の会話を聞いて、何となく身に覚えはないだろうか?
親「あれ、今日は水泳教室の日でしょ? まだ支度してないの?」
子「今日はしんどいから行きたくないな」
親「何言ってるの。自分で行きたいと言ったんでしょ。一度行くと決めたらちゃんと行かないとダメだよ」
 では、こちらはどうだろうか?
親「また動画見てる。宿題は終わったの?」
子「このユーチューバーの新しい動画が出たところだから見ないと」
親「そんなの今じゃなくていいでしょ! 先に宿題をやりなさい」
 この2通りの会話の両方をやったことのある親は、多いのではないかと思う。これらの大人の対応には一貫性がないことに、お気づきだろうか?
 これらの会話では、「一度やると決めたことをちゃんとやる」ということについて、親が子どもに意見を言っている。親は、前者では「自分でやると決めた水泳をちゃんとやらないといけない」と言っているが、後者では「ユーチューバーの新作動画を必ずすぐに見る」という子ども自身の決定を否定している。
 さらに言えば、前者の場合、水泳をやると決めるプロセスでこんな会話があったりする。
親「Aくんが駅前のスイミングスクールに行き始めたんだってよ。あなたもやってみない?」
子「そうだね」
 で、この「そうだね」をもって、親は「やると自分で決めた」ことの根拠とするのだ。子どもよりも親の方がやらせたいことの場合、子どもはうかつに「やる」と言ってしまうとひどい目に遭いかねない。一方、動画のように、親がどちらかというとやらせたくないものについては、親は子どもの強い意志を踏みにじろうとしがちだ。
 「いや、そんなことはない、子どもがぜひやらせてほしいと頼むから入会金を払ってやらせているのに…」という場合もあるだろう。でも、はじめはやりたいと思っても、いざやってみると飽きることもある。やってみて、自分には向いていないと思うこともある。一度始めたことをすべてやり通さなければならないとなると、われわれは身体がいくつあっても足りない。何かを始めるときには必ず何かをやめる必要がある。そういうことを繰り返すのが試行錯誤というものだ。
 子どもの自立にとって重要なのは、やり始めたことを漫然と続けることよりも、自分でやるかどうかを自分の意志で決めること、そして、やめることも自分で決めて試行錯誤していくことではないだろうか? 親は、子どもの自己決定と試行錯誤を見守るしかない。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します