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<129>会話のスタイルさまざま

2018年11月14日
自分のスタイルで

自分のスタイルで

 僕の使っている外来診察室には、診察机から数メートル離れたところにソファがある。通常、子どもと保護者は、診察机の脇にある椅子に座って僕と話すのだが、たまに離れたソファに座って漫画を読んだりゲームをしたりする子どもがいる。保護者は「こっちに来て話しなさい」と促すのだが、ソファから動こうとしない。それならば室外のベンチで待っていていいよと言うと、それにも応じない。
 このようなとき、僕は保護者に「そのままにしておきましょう」と言って、保護者と話を始めてしまう。結局、最後まで漫画を読み続けて、あいさつもそこそこに帰るという場合もある。しかし、話のところどころで「そうじゃないよ」「それはね、~だったんだよ」などと口を挟んでくる子どもが意外に多い。
 話すことが本当に何もなくて漫画やゲームをやりたいのなら、外に出ることはうれしいはずだ。漫画やゲームをやりながらでも室内にとどまる子どもたちは、そのスタイルが最も会話に参加しやすいのだ。自分のことを保護者が相談しているのを近くで聞くのはちょっとしんどいけれど、内容は聞いておきたい、という子どももいる。初診からまだ間もない時期の子どもたちの多くは、そんな感じだ。
 しかし、しばらく通院して慣れてくると、ゲームをやりながらときどき話に参加するのが最も話しやすいと思っているように感じられるようになる。たまに重要な相談があるときだけは診察机まで自らやって来て話す。そして一通り相談が終わると、あとはまたソファに行って漫画を読むスタイルに戻る。
 白状すると、僕自身もこのようなスタイルの対人関係をとることはよくある。家では、家族が話している横で自分だけパソコンをやっていて、ときどき口を挟む。研修や会議で誰かの話を聞いているときに、手元で別の資料やスマホのニュースなどを見る、いわゆる「内職」をする。
 誤解を恐れずにあえて言うと、人の話を聞くときに、手元で何もせずに相手の話だけを聞き続けようとすると、かえって集中できない。眠くなることや、別のことを考えてしまって、話の内容が全く頭に入らないことが多い。ちょっと内職しながらくらいの方が、むしろ要点が頭に入りやすいのだ。
 子どもたちが漫画やゲームをやりながらときどき話に参加するというのも、同じかもしれない。ちょっと距離をとり、漫画やゲームをやりながらときどき口を挟むくらいの方が、むしろ話に集中でき、頭にしっかり入るという子どもは、確実にいると思う。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します