ホーム
最新
山梨
全国・海外
スポーツ
Eye
安心・安全情報
おくやみ・催し・人事
写真・動画
分かる・知る
ビジネス

<127>ほめ言葉が与える影響

2018年10月10日
ほめて、ほめて

ほめて、ほめて

 電車のシートに5~6歳の男の子が両親に挟まれて座っていた。男の子は、何やら一生懸命に話している。内容はよく聞こえないが、自分のやったことを説明しているようだ。しばらく男の子が話したとき、両親が突然、ほぼ同じタイミングで「えらいっ!」と言った。言われた男の子は両親をかわるがわる眺めながらニコニコしていた。そのうれしそうな様子がとても印象的だった。
 きっとこの両親は、家でもよく子どもをほめているのだろう。とはいえ、公衆の面前で自分の子どもをここまで手放しでほめるのは、なかなかできることではない。家で子どもをほめていても、人前では「まぐれですよ」などとつい言ってしまい、なかなかほめなくなってしまう親が多いのではないだろうか。この両親が人目を気にすることなくわが子をほめる様子はとても見事で、爽快感すら覚えた。
 また、「えらい」という一言だけを、子どもが最もそれを言ってほしいタイミングで両親が同時に言った、その言い方とタイミングも見事だった。ほめられるのはうれしいけれど、不必要に長々とほめられると、むしろわざとらしさを感じ、何か下心があるのではと勘ぐってしまう。
 子どもの話の内容は聞こえなかったが、おそらく大げさに称えられるほどの内容でもなかったと思う。シンプルな「えらい」という言葉だけで、子どもは十分にうれしそうであった。むしろ、親が正当に評価していることで安心できたのだと思う。
 人には誰でも、自分を認めてもらいたいという気持ちがある。それを「承認欲求」といい、自分自身で承認する「自己承認欲求」と、他者から認めてもらいたいという「他者承認欲求」とがある。ある程度の承認欲求は、誰にでもある。しかし、子どもの頃に親から十分に認めてもらえないと、大人になっても自分に自信が持てず、自己承認がうまくできない。他者承認欲求が強くなり、大げさな自己アピールが目立つなど、いつも人の評価ばかり気にするようになる。
 自然な自信を身につけるには、子どもの時に本人の自己評価に見合った程度に親からほめられる経験が必要だ。電車で見かけた両親は、変に謙遜することもなく、かといって不自然に華美なほめ言葉を連ねることもなく、子どもにとって最も自然で端的なほめ方をした。両親が同じタイミングで言うところなど、日ごろから夫婦間のコミュニケーションもよさそうだ。「えらい」のたった一言だが、子どもは自信だけでなく親への信頼感と安心感も得られたと思う。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します