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<126>小さな一歩の積み重ね

2018年09月26日

 信号のある交差点の渡り方を子どもに教えるときのことを想像してみよう。
 まだ色の見分けができない乳児の場合は、何の説明もせず子どもを抱きかかえて渡る。色の見分けがつくようになったら信号のルールを教えるが、子どもが十分に理解したと思えるまでは、渡るときに子どもの手を引くだろう。何度も繰り返し信号のルールを教え、手をつないでいても子どもが青のときは自分で歩き始め、黄色や赤のときは足を止めることができるようになったら、手を放してみる。
 でもしばらくは、確実に信号のルールが守れるかどうかを、一緒に歩きながら見守る。青でも自信がなくて親に「渡っていい?」と確かめる子どもには、その判断でよいことを伝える。黄色なのにうっかり交差点の中に入ろうとする子どもには、「黄色だよ」と注意を促す。そのような段階を経て、ようやく親が見ていない交差点を一人で渡らせてみる。
 このように、子どもが一人で判断できるようになるためには、必要な情報をしっかり教え、わからないときや自信の持てないときに気軽に大人に相談できることを保証しながら、スモールステップで丁寧に進めていくことが重要だ。これによって、自分で判断する力だけでなく、誰かに相談する力も身につけることができる。
 最近登校を渋っているという小学4年生の子どもが来院した。母親が理由を尋ねると、その子はこう言ったそうだ。「去年まで何でも指示していた先生が、4年生になったら何も言わなくなった。いつも『自分で考えなさい』と言われるだけで、何をどうすればよいのかわからない」と。母親が先生に事情を尋ねたところ、「4年生では『子どもたちが自分で考える』というのが学年全体の方針に決まったのですよ」と言われたそうだ。
 小学4年生の子どもたちに自分で考えさせることは、間違いではない。でも、この先生の場合は、子どもが自分で判断できるだけの情報を与えていないことと、相談を一切受け付けなかったところが問題であった。前は何でも子どもに指示し、頼らせていたのに、学年が変わった途端に手のひらを返したように指示もなく相談も受け付けなくなってしまったら、子どもは著しい不安と大人への不信感を強めてしまい、自分で判断する力も人に相談する力も身につけられなくなってしまう。
 自分で判断する力を身につけさせるには、丁寧なスモールステップが必要であり、ただ突き放すのとは全く違うということを、親や教師は十分に認識していただきたい。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します