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<125>「過剰適応」には要注意

2018年09月12日
「やりたいこと」いろいろ

「やりたいこと」いろいろ

 前回に引き続き、やりたいことと、やるべきことの話をする。
 やりたいことを自分のペースでやるのは楽しい。でも、われわれは、やりたくて始めたことでも何か目標を立てることが多い。簡単な目標なら良いが、だんだん高度な課題をノルマにして、つらくなってしまうことがある。やりたくて始めたのに、いつの間にかやるべきことに変わってしまい、負担感が強くなる。趣味だと楽しかったのに仕事にしたらつらくなった、という経験をしたことのある人もいるだろう。「やりたいこと」と「やるべきこと」の境界は、実は曖昧だ。
 大人が子どもの行動を注意したりしかったりする内容の多くは、「やりたいことばかりせず、やるべきこともちゃんとやれ」というものだ。「遊んでばかりいないで勉強しろ」などがこれに当たる。もともと人は自己中心的で遊び好きで怠けたい気持ちが強くて、他者への配慮や学習や仕事はやりたくないものだ、という前提がそこにはある。
 小さいときは自己中心的で遊んでばかりだった子どもたちも、成長とともに我慢を覚え、やりたいことを控えてやるべきこともするように育っていく。でも、大人になってもやりたいことがなくなるわけではない。健康な大人はやりたいことがちゃんとあって、それをやるためのプロセスや手段として必要最小限のやるべきことをやる。
 例えば、高額な物を買いたい人は、それを買うお金をためるために働く。人と良い関係を築きたい人は、わがままを我慢して協調性を身につける。このように、人が外部の環境とうまくやっていけるように自分の考え方や行動を変えていくことを「適応」という。
 子どものこころの診療でしばしば出会うのが、「やりたいことがない/見つからない」という子どもたちだ。やるべきことばかり意識して、やりたいことを抑圧してしまい、結果的に意欲や自信が低下している。そういう子どもの中には、幼少期に親や教師から「何も問題のないよい子」と思われていた子どもが案外多い。
 やりたいこと(=本来の自分)を押し殺し、やるべきこと(=適応)を過剰に優先することを「過剰適応」という。集団のために協調性を重視し過ぎる傾向のあるわが国で、過剰適応はしばしば問題になる。大人だけでなく、一般的にはまだ我慢などできないと思われがちな子どもたちでも、過剰適応することがあるので、注意が必要だ。
 子どものうちは、やりたいことだらけで大人から言われないとやるべきことに気づけないくらいでちょうどよいのだ。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します