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<121>悲観をさせない言い方

2018年07月11日
願い事いっぱい

願い事いっぱい

 僕の外来では、初めて受診した小学生以上の子どもたちに所定の質問紙を渡して記入してもらっている。「好きなこと」「きらいなこと」などの項目が並んだ最後に、将来は何になりたいかという質問を入れている。小学生だと、その時点で夢中になっているものに関連した職業などを答えることが多い。「サッカー選手」「パティシエ」などは人気が高いが、ここ数年は「ユーチューバー」も増えている。中学生以上だと、もう少し現実的な答えを書くことが多くなり、「未定」などと書く子どもも増えてくる。
 この質問に、たまに「ニート」と書く子どもがいる。ある子どもは、「どうしてニートなの?」という僕の問いに、こう答えた。「いつも親から『そんなことじゃ、将来はニートになっちゃうよ』と言われる。自分でも、将来ちゃんと仕事ができるようになるとは思わない。だから、たぶん僕は将来ニートになる」
 このような答え方をする子どもたちは、日頃から大人に「〇〇もできないようでは、将来ニートになっちゃうよ」といった種類の言葉をかけられていることが多い。大人は発奮させるつもりなのだろうが、子どもは「〇〇もできない自分は、将来できることなどない」と真に受けてしまうことがある。「どうせニートにしかなれないのなら、頑張っても無駄だ」と考えて、あらゆることに対して努力をやめてしまう子どももいる。
 「△△になりたいのなら、〇〇ができなければならない」などの言い方も、逆効果になりやすい。大人だとこのような言い方をされて発奮できることがあるが、それは、「△△になりたい」という意志が明確な場合だ。一方、子どもが将来なりたいものを口にしても、多くの場合、それはまだほんの軽い気持ちや思いつきにすぎない。それに対して高いハードルを設定するようなことをいちいち言うと、子どもは「厳しいハードルばかりで、自分には無理」と早い時期から諦めて、意欲と自信を失ってしまう。
 これらの言い方をする大人は、「〇〇くらいできないと、本当にニートになってしまうかも」と心配かもしれない。でも、それを言うことで子どもに「ニートにならざるを得ない」と思わせてしまうのでは、逆効果だ。そもそも「〇〇をやるように言ってもなかなかやらない」というところが問題なのだろうが、実はそれをやらせようとすること自体が子どもにとってハードルが高すぎるのかもしれない。将来を悲観させるような言い方はなるべく控えたいものだ。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します