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<120>自分の気持ち自覚する

2018年06月27日
ゆっくりお茶でも

ゆっくりお茶でも

 先日、この連載の書籍化を記念して、長野県松本市で講演会が開かれた。その時にいただいた質問の中に、次のようなものがあった。「親の鬱憤晴らしで子どもを叱ってしまうことがあります。そんなとき、自分が感情的にならずにすむ魔法の言葉はありませんか?」
 確かにわれわれは、子どものしたこと/しないことに腹を立て、腹の虫を収めるために子どもを叱ることがしばしばある。例えば宿題をなかなか始めない子どもに「まだ宿題やってないじゃない」と叱ると、子どもが「うるさい!」と逆ギレしてけんかになり、結局宿題をやる時間が後ろにずれ込む。このようなことを毎日繰り返している場合、試しに何も言わないでみると、案外子どもはギリギリで宿題をやることが多い。それが分かっていてもつい叱ってしまうのは、自分の気持ちが収まらないからだ。総じて、本当に子どもの心に響くやり方で叱られると、子どもの行動は1回で変わる。何度繰り返して叱っても効果がないときは、叱る理由が自分の鬱憤晴らしではないかと自問自答する必要がある。このことは、以前にもこの連載で書いた。講演会での質問は、それを踏まえてのものだった。
 この質問はとても重要なテーマをはらんでいる。子育てについて語るとき、われわれはつい「子どものために大人はこうしなければならない」という議論に偏りがちだ。しかし、大人がいつも冷静でいられるわけではない。自分の意に反することを子どもがすれば、イライラする。叱るときだって、いつも子どものためを思ってばかりはいられない。自分の憂さ晴らしで子どもに当たることだってある。
 残念ながら、イライラする自分の気持ちを収める魔法の言葉は、なかなか見つからない。ある程度感情的になるのは人として健康的なことだ。大事なことは、自分の気持ちを大人が自覚しておくことだと思う。「いつも自分が正しくて子どもは間違っている」とか、「いつも自分は冷静に子どものためを思って行動している」などと勘違いするよりは、「自分もついカッとなってしまうことがある」と自覚する方がよほどましだと思う。
 もし子どもに叱った後で、「自分も冷静ではなかった」と気付いたら、少しほとぼりが冷めてお互いが冷静になった時に「さっきは言い過ぎたね」などと謝るのもよいだろう。でもいちいち謝るのも大げさかもしれない。そんなときは、おやつとお茶でも用意して、子どもを誘って少しゆったりした時間を一緒に過ごしてみてはいかがだろう。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します