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<118>好き嫌い 理屈じゃない

2018年05月23日
楽しい食事が一番の栄養

楽しい食事が一番の栄養

 好き嫌いは、理屈じゃない。
 僕は子どもの頃からプロ野球を見るのが好きだ。でも、Jリーグはそれほど見ない。学生時代、英語はどちらかといえば得意な方だったが、仕事で一番やりたくないのは翻訳だ。なぜかと言われても、わからない。好きなものは好きだし、興味のないものは、どんなに「楽しいからぜひ」と言われても、全くやる気がしない。
 恋愛もそうだろう。「好きです」と告白するのは自由だが、相手に「好きになってください」と頼んだからといって恋愛感情を持ってもらえる保証はない。好き嫌いは努力ではどうにもできないことを、多くの人はわかっているはずだ。
 でも、大人は子どもに対して、嫌いなことを強要することがある。その代表の一つが、食べ物の好き嫌い-いわゆる偏食-への「指導」だ。昔は給食を全部食べるまで席を立たせてもらえなかった、鼻をつまんで無理やり牛乳を飲まされた、などという話が全国の学校であった。今はさすがに、そのようなことをする教師は懲戒の対象であるという認識が一般的となった。でも、今でも「食べなくてもいいけれどほんのちょっとずつでも慣らしていきましょう」などと言って、皿の片隅に嫌いな食べ物をごく少量だけ置いたりする先生はいるそうだ。「毎日目に触れたら慣れて好きになるかもしれない」という発想は、「ストーカーしていたら相手も慣れて自分を好きになってくれるかもしれない」という考え方と同じではないだろうか。大人の場合、職場の宴会で嫌いな食べ物が出ても残して構わない。上司が無理やり食べさせようとしたら、パワハラと言われてもしかたがない。
 たしかに「食わず嫌いだったけれど食べてみたら意外に平気だった」などということもあるのも事実だ。勧められて食べてみたら以来病みつきになったなどということもある。自分が好きなものや良いと思うものを人に勧めることは、別に構わない。問題は、勧める側の気持ちの持ち方だ。「自分が好きなものは他の人も好きになるに違いない」と思い込んだり、他の人も好きにさせることを目標にしたりするのは、見当違いだ。そうではなく、「食べてみたらおいしいかもしれないよ」という情報は伝えるが、食べる気になるかどうかはあくまで本人次第という姿勢を保つことが重要だ。
 食事は楽しく食べるのが基本。栄養のバランスもある程度は大切だが、それにとらわれ過ぎて食事が楽しくなくなり、心のバランスが崩れることのないようにしたいものだ。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します