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<117>行動の強制は自立妨げる

2018年05月09日
特別な野菜に変身できるかな?

特別な野菜に変身できるかな?

 大人が子どもにやらせたいことと子どもが実際にやることは、しばしばずれる。そんなとき、自分の思惑通りに子どもの行動を修正したくなるのが、多くの大人の心情だ。
 人の行動は「やる」か「やらない」かの二つしかない。だから、子どもの行動を大人が修正する場合も「子どもがやっていることをやめさせる」か「子どもがやっていないことをやらせる」かの2通りになる。1~2歳の子どもが歩道をはずれて車道に出ようとしたとき、親は子どもの身体を抱え上げて歩道に戻す。このように、子どもがやっていることをやめさせるのは、いざとなれば強制できる。しかし、子どもがやっていないことをやらせるのは、そう簡単ではない。乳幼児期でまだ言葉が出てこない子どもに対して、「どうすれば言葉が出ますか?」という相談を受けることがあるが、極めて難しい問題だ。
 行動は「やる」か「やらない」かの2通りしかなくても、その裏にある心理状態はさまざまだ。意欲、能力、興味、感情、状況判断などが複雑に絡み合った結果として、やるかやらないかのどちらかの行動となる。歩道から車道に出ようとする2歳児は、興味のおもむくままに行動し、状況判断能力がまだないからやる。遠足の子どもたちが電車の中で騒ぐのは、楽しすぎて状況判断がおろそかになるからだ。スキージャンプにあこがれても、幼児だと身体能力が不十分なのでできない。本の音読が得意な子どもでも、極度のあがり症のために発表会には出場しないことがある。
 事態をさらに複雑にするのが、他者からの働きかけだ。これは主として子どもの意欲と感情を動かす場合と、状況判断を促す場合とがある。ふだんはニンジンを嫌がって食べない子どもが、はじめて料理を手伝って作ったカレーのニンジンは喜んで食べることがある。これなどは、料理に参加した達成感が意欲を増す例だ。信用できないインターネットの請求に課金しようとしている子どもに対して、その請求が怪しいものであることを説明して思いとどまらせるのは、状況判断を促している。
 強制的にやらせたりやめさせたりするのは、多くの場合は意欲と興味を低下させ、感情的には緊張や恐怖を伴う。強制力が強くなると、子ども自身が状況判断をしなくなるので、自立を妨げる側面もある。よほど子どもの危険な行動を止めるとき以外は、強制はできるだけ避けたい。子どもが自分で状況判断し、意欲を持って前向きな気持ちでやるかやらないかを決めることを補助するのが理想的だ。(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します