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<114>自分に正直な生き方を

2018年03月28日
夢を大切に…

夢を大切に…

 第90回アカデミー賞で、辻一弘さんがメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。辻さんは48歳。10代から独学で特殊メークを研究し、高校を卒業後は単身渡米して映画の特殊メークの仕事をしていたという経歴だそうだ。
 個人の日本人のアカデミー賞受賞は25年ぶりとのことで、日本のマスコミも大きく取り上げた。テレビや新聞でたくさんのインタビューを受けている辻さんの発言の中で、何度か出てきた言葉が印象に残った。インタビュアーから「若い人たちへ何かメッセージを」と言われた時、辻さんはこう言った。「夢があったら絶対に他人の意見は聞かないように。自分に正直に、自分の心に聞いて決定すべき。親でも友達でも先生でも絶対に聞いたらダメです」と。
 この言葉を、世の親たち、教師たちにぜひかみしめてほしいと思う。思春期・青年期は、それまで絶対視しがちであった大人と自分との間に価値観や認識のずれを感じ始める時期であり、「自分とは何か」「何をしたいのか」をめぐって心が揺れ動く時期である。この時期に他人の意見に流されることなく、自分の心に正直な生き方を選ぶことは、人としての成長に不可欠だ。すでに多くの経験を積んでいる大人たちが、決して明るい未来が保証されないようなことをやりたがる若者に忠告の一つもしたくなるのはもっともだ。しかし、もしうまくいかなかったときに「あの時、大人の忠告に従っておけばよかった」と後悔する人は、意外に少ない。逆に、「あの時、自分の思った通りにすればよかった」と後悔する人は多い。
 辻さんのように成功する人ばかりではないし、やりかけても途中で気持ちが変わる人もいるかもしれない。いずれにせよ、その時その時の自分の気持ちを心静かに確かめる習慣を持てるようになるかどうかが、成長にとってとても大事だと思う。
 ここで誤解してはならないことがある。若者に「他人の意見を聞くな」と言ったからといって、大人たちに「若者に意見するな」というわけではない。自分の気持ちをはっきりとわかるためには、さまざまな考え方や意見があることを知ることも重要だ。対立する考え方を知ることで、自分の気持ちを再確認できる。時には、大人の意見が自分の気持ちと一致することだってある。それはそれでよい。大人たちが若者に「自分ならこうする」という考えを述べることは決して悪くはない。ただし、それを絶対的な価値観として相手に押し付けることのないように気をつける必要はある。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します