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<113>自立のための反抗期

2018年03月14日
反発しちゃうんだ

反発しちゃうんだ

 最近のテレビCMで、友だちと外出する子どもから「ついてこないで」と言われて、「反抗期キター!」と父親が喜んでいる場面があった。父親は「今日は赤飯だ!」と言い出し、さらにいやがる子どもをハグしながら通りすがりの人に「うちの子、反抗期来たんすよー」と自慢するのだ。
 俳優の演技もとても面白いのだが、視聴者がこの場面を面白いと思うのは、それだけが理由ではない。父親の行動が意外だからだ。多くの親たちは、子どもが反抗的な態度を取ったときに、少なくとも喜びはしない。それを象徴するように、このシーンの後半では、子どもの同行者が「息子の成長を喜んでいる」とつぶやいている。反抗期に入るのは、子どもが成長していることの証しである。しかし、子どもが親に反抗的な態度を取ることを、ほとんどの親は喜ばないはずだ。そのような前提があるからこそ、反抗的な子ども本人の前で無邪気に喜んでいる父親の姿に意外性と面白さがあるのだと思う。
 どんな大人も、何らかの形で反抗期を経てきている。反抗といっても、暴力や言葉による明確な反抗を示す人ばかりではない。表向きは反抗的でなくても、大人たちから微妙に心理的距離を取るような場合もある。それまで大人を全面的に頼っていた子どもが、自分の意志で行動し始めたときに、すべてが大人の思い通りにいかなくなる。そこで自立心や大人からの決別の感情が生じるのが、反抗期というものだ。
 大人の側から見ると、子どもがいつまでも大人を頼るようでは困る。でも、子どもが自分の言うことをきかなくなったり、目の届かないところに行こうとしたりするのは、腹が立つこともある。だから、子どもが反抗期に入ると、親にも複雑な葛藤が生まれる。精神科医にとって、子どもの反抗期は、親の心の中を垣間見るよい機会となるのだ。
 多くの親は、「自分にもこんな時期があったなあ」などと内心で思いながら、ある程度は子どものやりたいことをさせるだろう。子どもに一切の反抗や主張を許さない親も、ごく一部ながらいる。このような親は、強い葛藤やトラウマを抱えていることがある。CMの父親のように子どもの反抗期を手放しで喜んで本人にハグまでするという親は、さすがに多くはない。でも、長い目で見れば、いま大人になった人たちのほとんどは反抗期を無事に卒業して親から自立しているわけで、「ついにわが子も反抗期か!」と喜んだっていいわけだ。案外、そのような親の心は健康的なのかもしれない。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します