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<104>発達の仕方はさまざま

2017年10月25日
それぞれのペースで

それぞれのペースで

 前回に続き、就学予定の年長児の保護者向けの入学説明会で配布された資料の話をする。
 ある学校で配られた資料に、「校長からの言葉」として次のようなことが書かれていたのを見たことがある。「お子さんが小学校に入るまでに、以下のことができるようにしておいてください。(1)呼ばれたら『はい』と返事ができる(2)自分の名前(ひらがな)が読める(3)自分で着替えができる(4)箸やスプーンを使って食事ができる…」
 全部で10近くある項目をすべて満たさないと入学させませんよ、と言わんばかりの書き方に、僕は抵抗を覚えた。発達に遅れや偏りのある子どもたちは、これらが入学までにできるようになるとは限らない。親がどんなに頑張って教えても難しい子どももいる。そのような子どもの親がこれを読むと、「育て方が悪い」と責められたような気持ちになってしまう。中には、焦って無理に子どもに教え込もうとする親も出てくるかもしれない。いくら教えてもできないと、子どもを親が叱る場面が増えて、親子関係や子どもの情緒発達に悪影響が出る。
 子どもの発達の仕方は、多様性に富んでいる。この校長が求めているような力を就学前にすべて身につける子どもも確かに多いが、身につけきれない状態で入学してくる子どもも必ずいる。そのような子どもがいるときに、他の子どもたちと一緒に学校生活を開始すると、一斉指導や集団生活の中でうまくいかない場面が多く出てくることが予想できる。しかし、だからといって、その原因を親の育て方の悪さと決めつけて、集団から排除するような態度は断じてしてはならない。
 いま学校では、多様な子どものニーズに対応して、どのような子どもたちでもスムーズに学校生活に臨めるよう、さまざまな配慮が可能である。例えば、話し言葉はわかるけれども字の読み書きが特に苦手な「学習障害」の子どもに対しては、IT機器を用いて読み書きの負担を減らして授業に参加できるような支援ができる。このような支援を「合理的配慮」と言う。理解力全般の発達がゆっくりな「知的障害」の子どもに対しては、本人が十分に理解できるペースで授業を行う「特別支援教育」も保障されている。
 もし就学に際して子どもの到達度を確認するのであれば、親に責任を押し付けて頑張らせて、できなければ排除する、という姿勢ではなく、心配なことについて腹を割って相談してもらい、個々の子どもに必要な配慮を学校側が提供するという姿勢を示すことが重要である。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します