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<103>面白ければちゃんと聞く

2017年10月11日
座って聞けるかな?

座って聞けるかな?

 多くの小学校では、秋になると翌春に入学予定の子どもたちの保護者向けに、説明会が行われる。そこで配布される資料を保護者に見せてもらい、その内容に驚くことがある。今回と次回は、その話をする。
 今回取り上げるのは、こんな内容が書かれたプリントだ。「学校は幼稚園や保育園と違って、勉強する場所です。今は走り回って遊ぶことが中心ですが、学校に入ったら教室で椅子に座って先生の話を聞くことが中心になります」「学校では、座っていられる力や集中して話を聞く力が大切です」…。
 保護者は、これを読んでどう考えるだろう? 「うちの子は40分もじっと座って先生の話が聞けるようになるだろうか?」などと、学校から求められている状態に子どもたちが到達できるか心配になる人が多い。中には「座って人の話を集中して聞く」ことの練習を家で始める保護者も出てくる。
 でも、ちょっと待ってほしい。もし、「座っていられる力や集中して話を聞く力が大切です」の前に「先生の話がどんなにつまらなくても」という言葉を入れたら、印象がずいぶん変わらないだろうか?
 小学生が授業中に座っていられるかどうか、先生の話に集中できるかどうかは、子どもの能力や努力だけでなく、いや、それらよりも、授業が面白いかどうか、先生の言っていることがわかりやすいかどうかにかかっている。面白いと思えば身を乗り出して集中して聞くが、つまらなければ座っているのがつらくなる。大人でもそんな場面はたくさんある。それなのに、学校で子どもに対してだけは、授業や活動の面白さによらずじっと座っていろ、集中しろと言うのは、大人の身勝手だ。学校が幼稚園や保育園と違って座って先生の話を聞く場所だと言うのであれば、校長は保護者ではなく新1年生の担任たちにこのプリントを配り、「新入生が椅子に座って集中して話を聞けるような魅力的な授業になるよう、先生たちは工夫してくれたまえ」と指示するのが筋だろう。
 わが国では、「大人の指示に子どもを従わせたい」と考える大人たちが多い。診察でも「子どもが親の言うことをちっとも聞かない」という話題は多いし、子どもを学校に送り出すときに「先生の言うことをよく聞くんだよ」と言う保護者もいるだろう。でも、大人がいつも正しいとは限らない。理不尽な指示であれば、従うべきではない。大人の指示に従うことを子どもに求めるのではなく、子どもが心から納得して自発的に行動できるよう大人が配慮することが大切だ。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します