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<101>情報の伝達 工夫が必要

2017年09月13日
これ見たい!

これ見たい!

 僕の娘が中学生の頃の話である。家にいる時にふと疑問が湧いたらしく、こんなことを聞いてきた。「ねえ、クリスマスって誰かが死んだ日だっけ?」
 笑い転げながらも、考えた。娘はクリスマスを「サンタさんがプレゼントを持ってきてくれる日」とは理解していた。しかし、そもそもこの日が歴史上どんな意味のある日なのかは、親もちゃんと教えたことがなかった。あるいは、誰かに教わったことや書かれたものを読んだことはあっても、娘の関心を引かなかったのかもしれない。わが家は無宗教なので、宗教に関することが家で話題に上ることはまずない。僕も妻も、そして娘も、興味のある話では盛り上がるが興味がないと素通りしてしまう。
 「この家は、子どもにどんな教育をしているのだ?」と思われた方もいるだろう。常識や歴史を教えていないのは、いかがなものかと。では、そういう方に改めて問いたいのだが、ムハンマド(イスラム教の開祖)や釈迦の誕生日をご存じだろうか? これらは、知らない人の方が多いのではないか。なぜ、特定の宗教の重要人物だけが、その誕生日を知らないと「常識がない」とみなされるのだろうか?
 人間の記憶力には限りがある。この数世代で人類の記憶容量が大幅にアップしたという証拠はない。一方で、社会に流通する情報量は年々急増し、とどまるところを知らない。われわれは、限られた力を有効活用する必要がある。つまり、覚えることと覚えないことを選別することになる。何を覚え、何を覚えずにおくのかは、自分で決めるしかない。当然、興味のあることを優先する。このように、情報過多になればなるほど、興味のある情報だけを選別しようとする志向はむしろ強くなる。インターネットの普及によって情報を選別しやすくなった現代社会では、個々の人が得る情報の偏向化が進み、「みんなが知っている常識」が減ってくる。
 このような時代には、親が大事だと思うことをうまく子どもに伝えるのが難しくなってくる。正直なところ、クリスマスの意味を知らなくても娘は中学まで困ることはなかった。でも、僕たちは娘に「平和の大切さ」などをちゃんと伝えることができたかどうか、心もとない気持ちもある。特に親子の場合、親が熱心に教えようとすることに限って子どもが反発し、あえて避けたりするので、なおのこと難しい。情報過多の時代だからこそ、受け手に聞くことを強要するのでなく、受け手が興味をもてるような工夫をして伝えていく必要がある。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します