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<99>特別扱いが心の栄養に

2017年08月09日
ぼくとわたしの特等席

ぼくとわたしの特等席

 子どもたちは夏休み中だ。子どもが2人以上いる家庭の多くでは、毎日をどう過ごすか親たちが頭を悩ませていることと思う。きょうだいが一緒にいる時間が長いと、ささいなことで衝突しやすい。仲が悪いわけではないとしても、ずっとそばにいるとオモチャの取り合いになったり見たいテレビ番組が違って争いになったりして、親が仲裁に追われることも増える。家族で遊園地に出掛けても、何に乗るか、誰が先かなどですぐにもめる。
 このようなとき、親は子どもたちになるべく分け隔てなく対応しようとするのが一般的だ。けんかが起これば「けんか両成敗」、遊園地の乗り物の順番などを子どもたち同士で譲り合うよう言い聞かせ続ける、などである。誰か1人だけを特別扱いすると他の子どもから文句が出るから、いつも公平に接するようにしているという親が多いだろう。
 ごく当たり前に見えるこのような対応は、子どもの側から見ると実は不満が残る。子どもにとって親は唯一の存在だが、親から見れば自分は何人かの子どものうちの1人にすぎない。たしかに公平かもしれないが、何をするにしてもいつも自分は何分かの1しか満たされないという状態が漫然と続くことになる。本当は、親にとってすべての子どもが大事であるのだが、子どもはその気持ちを感じることができず、「自分は親から大事に思われていないのではないか」などと、常にどこか満たされない思いを抱き続ける。
 われわれは、「家族はいつもみんな一緒に行動するものだ」と思いがちである。でも本当は、別にいつもみんな一緒でなくたっていい。一人一人の子どもが、時々は親を独占できる機会を持つようにすることも大事なことだ。個々の子どもにとって、自分1人だけが行きたい場所に連れて行ってもらえる、自分1人だけが欲しいものを買ってもらえる、そのような機会が時々あるとよい。いつも何分の1で不満が続くのではなく、時々100パーセントの満足が得られる経験をすることによって、「自分も十分に親から大事に思ってもらえているのだ」という安心が得られる。休みの日の外出も、時には他の大人の協力も得ながら、子どものうち誰か1人だけを連れて外出して、その日だけはその子だけが親を独占できる時間を作ってみていただきたい。すべての子どもにとって、自分が親から特別扱いされる体験は、漫然とした不満や不安を取り除き、満足と安心を得て健康的に自立に向かう大事な心の栄養になる。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します