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<97>満ち足りると自立早く

2017年07月12日
大きくなあれ

大きくなあれ

 わが国の代表的な児童精神科医の一人で、「子どもへのまなざし」などの著書でも知られる佐々木正美先生が、6月28日に永眠された。佐々木先生と僕は、20年ほど前に2年間、同じ職場に勤務していたことがある。いつも穏やかで包容力のある素晴らしい先生だった。
 佐々木先生から学んだことは数えきれないが、今回はその中でも最も重要で、子育てにおける基本中の基本と思うことを取り上げたい。それは、「過保護と過干渉は違う」ということだ。一般に「過保護に育てると子どもがいつまでも親に依存して自立しないからよくない」と思われがちだが、佐々木先生はそれが誤解であることをいつも強調されていた。子どもは自分の望んでいるいろいろなことを思いどおりにしてもらうと、やがて満ちたりて、どんどん自立していくものだ。満たされれば満たされるほど、むしろ自立は早くなる。だから、子どもが望んでいることを親はいくらでもやってよいし、やり過ぎることはない。本来、「過保護」という概念すら必要ない。もし、いつまでも子どもが親を頼ってくるとすると、それは過保護だからではなく、むしろやりたいことを十分に満たしてこなかったから、と考えるべきだ。
 逆に、子どもの自立を阻むのが「過干渉」である。干渉とは、やりたいことでなくやらねばならないことをさせようとすることだ。「やらねばならないこと」の多くは、実は親がやらせたいと思っていることにすぎない。しつけなど、ある程度は必要だが、過剰になると、子どもは親の意向をいつも気にしなければならない。過干渉な親は、子どもが親の意向に沿ったときにだけ褒め、物を買い与える。このような育て方だと、他者の評価に過敏になり、自分で物を考える習慣が身につかない。やりたいことが常に中途半端で終わるため、ずっと不全感を抱えたままである。自分のやりたいことが全くわからなくなってしまう子どももいる。子どもの自主性や主体性はやりたいことの中でしか育たないので、過干渉では子どもの自立がむしろ遅くなる。思春期にさまざまな問題を示す人たちの中に、小さいときは「聞き分けのよい子」と言われていたというケースがしばしばあるのは、親の過干渉が要因であることが多い。
 佐々木先生はよく「過保護にされて駄目になる子どもはいない」とおっしゃっていた。子どもたちが安心して好きなことに没頭できるような環境を少しでも増やせるよう努力することが、僕の佐々木先生への恩返しだと思う。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します