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<96>「姿勢正せ」は筋違い

2017年06月28日
なかなか直りません…

なかなか直りません…

 僕は、姿勢が悪い。あるとき、同僚の作業療法士(体の動きに関する専門家)から、「いつも身体のどこかを何かで支えていますね」と言われたことがある。そう言われてみると、確かにそうだ。立っているときは壁にもたれ、座れば頬づえをつく。頭の固定が悪いので、仕事用の椅子は背もたれを高くして、頭を後ろにもたれかけやすいようにしている。壁や机がないときも、腕組みをしたり足を組んだりすることが多い。そうやって身体の一部を固定させないと不安定な感じがする。子どもの頃から「肘をついて食べるな」とよく叱られていたが、いまだに直っていない。
 外来には、よく僕の「後輩」の小中学生たちが保護者に連れられてくる。授業中に姿勢が悪いため、「授業に集中していない」「不真面目だ」と叱られやすいのだ。このような生徒たちは、「背筋をピンと伸ばしなさい」などと注意されることが多い。背筋を伸ばして姿勢を正せば、授業に集中するだろうというわけだ。
 これは、全くの筋違いだ。
 姿勢が悪い人にとって、正しい姿勢をとることは多大な努力が必要だ。頭は傾いていないか、背筋は伸びているか、両手は指先までちゃんと伸びているか、足の位置はどうか、など、相当に意識しなければならない。このため、「正しい姿勢をとる」こと以外には気が回らなくなってしまう。「背筋を伸ばしなさい」という指示は、結果として授業に集中できなくなってしまうのだ。
 授業中、一番大事なことは何かというと、授業に積極的に参加することだろうと思う。ならば、姿勢は二の次でよい。ときどき指名したときにちゃんと答えられるかどうか、必要なときに適切な発言をするかどうか、そして授業が終わった後でちゃんと内容を理解しているかどうかを確かめればよいではないか。
 では、姿勢の悪い人たちにとって、姿勢を正すことが必要なのはどのようなときだろうか。それは、「正しい姿勢をとることが最も重要な場面」である。活動中何を考えているかよりも、姿勢の良さだけが重要な場面ということだ。例えば、何かの式典などで整列しなければならないようなときだ。校長や来賓のあいさつなど、内容をしっかり聞いていると姿勢が悪くなる。式典として整列を保つことを最優先に考えるのであれば、そのようなときこそ先生は生徒たちに「背筋を伸ばしなさい」と声かけをするとよい。ただし、あいさつの内容が生徒たちの頭に全く入らないことは、この際目をつぶっていただくしかないが。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します