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<95>「仲良く」より「楽しく」

2017年06月14日
「遊ぶ」に一生懸命

「遊ぶ」に一生懸命

 人が何かをするときには、活動内容そのものが主になる場合と対人関係が主になる場合がある。映画を見に行くという状況で考えてみよう。その映画を見ること自体が目的という人もいる。一方、「○○さんと一緒に何かしたい」というのが本当の目的であり、映画はその手段にすぎないという人もいる。後者の場合、どの映画を見るかは重要ではない。そもそも映画でなくてもよい。活動内容と対人関係のどちらを主にするかは状況によってさまざまだ。

 大人の社会では、活動内容が主であるように見えるものが大半を占める。仲良くなりたいなど対人関係が主たる目的の場合でも、多くの人は、一見活動そのものが目的であるふりをする。「見たい映画がある」と言いながら、実は好きな人と一緒に出掛ける口実にすぎないというのは、身に覚えがある人も多いだろう。「あなたとデートしたいから、その手段としてこの映画を選びました」と明言することは、まずない。「仲良くなる」あるいは「仲良くする」ということを主目的にした活動は意外に少ないし、難しい。

 子育てでは、親は子どもに「ママゴトして遊びなさい」などと言うよりも「友だちと仲良くしなさい」と言うことの方が多い。遊びの内容より、「仲良くする」という対人関係を求めたがるのだ。一方、子どもたちにとっては、活動の主目的は圧倒的に活動内容だ。誰かと仲良くなるために遊ぶのではなく、ただ遊びたいから遊ぶことの方が多い。一緒に遊んでみて、気が合えば仲良くするが、仲良くできないこともある。「仲良くする」というのは、結果であって目的ではない。子どもだって性格はさまざまだから、気の合う人ばかりとは限らない。気が合わない相手なのに「仲良くしなさい」と言われても、どうすれば仲良くできるのかわからない。子どもにはまだ酷な話だ。

 対人関係が明確に主目的となる活動が一つだけある。それは、けんかだ。大人でも子どもでも、けんかは簡単にできる。でも、仲良くすることを主目的とした活動は、大人でさえ難しいのに、子どもにうまくできるわけがない。「けんかせず仲良くしなさい」という指示は、子どもにとって最も抽象的で難しい課題なのだ。子どものうちは、対人関係を主目的とした活動よりも、何かを楽しむこと自体を主目的とした活動をたくさん経験することが、最も大事だと思う。その結果として、誰か一部の子どもと気が合えば仲良くすればよい。子ども同士の対人関係は、その程度で十分だ。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)