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<93>問題はスマホではない

2017年05月10日
楽しいことはいろいろ…

楽しいことはいろいろ…

 前回に引き続き、スマホ育児の話である。
 スマホ育児を問題視する意見のうち、代表的なものを二つ取り上げよう。
 ひとつは、「スマホ育児によって親子のスキンシップが減り、子どものコミュニケーションの発達が遅れる」という批判だ。スキンシップ減少やコミュニケーションの発達異常は、スマホ育児が原因とは必ずしもいえない。
 スキンシップがいくら重要だといっても、1日中親子が密着しているわけにもいかない。家事をするときなど、子どもに1人で過ごしてほしいときは必ず存在する。そのようなときに使いやすいのが、今の時代はたまたまスマホなのだ。子どもとのスキンシップが苦手だからスマホを使うという親もいるが、そのような親はスマホがなければ別の手段でスキンシップを避けるだけだ。つまり、スマホはスキンシップ減少の原因でなくスキンシップを減らしたいという需要を満たす手段なのだ。
 一部の発達障害の人たちのようにコミュニケーションが苦手な人たちの中には、人と接するよりもスマホが大好きで得意という人たちがいる。このタイプの人たちは、「スマホ育児が原因でコミュニケーションが苦手になる」のではなく、「対人コミュニケーションよりスマホが好きだから、結果としてスマホで遊ぶ時間が長くなる」のだ。彼らにとってスマホは知識や教養を身につけるための貴重な手段であり、彼らからスマホを奪うことは、社会参加への鍵を奪うことにも等しい。
 もうひとつの意見は、「スマホ依存症になるおそれがある」というものだ。たしかに、異常なまでスマホに執着して他に一切興味を示さなくなり、医療的な対応が必要となる人もいる。でもそれは、ごく一部にすぎない。多くの子どもは、いくらスマホが好きだといっても、他にも好きなことややりがいを感じることがあれば、適当なところでスマホを切り上げて他のこともやる。本当に依存症といえる人は一部であり、スマホばかりやるように見える子どもの多くは、他に好きなことややりがいを感じることがなくなっていることが本当の問題なのだ。これは、「スマホに夢中で子どもを放置している」と批判される一部の親にもいえることだ。彼らは、スマホに熱中した結果として子育てをサボるのではなく、子育てに十分な意欲がもてないためにスマホに手が伸びてしまう。
 問題はスマホにあるのではない。スマホに熱中する親や子どもの行動の裏にある心のケアの本質をきちんととらえる必要があるように思う。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します