大怪我だという和雄が気になって、耳の遠い婆ちゃんとの会話に少しイラついた。和雄が怪我をしてその電話中だと喉元まで出かかったが、かろうじて声をのみ込んだ。諍いはしていてもそこは親子だ、どんな反応が飛び出すか分からない。
俺の顔がかなり険しくなったのだろう。「そんなおっかない顔をしなんでも(しなくても)いいじゃん。私はおしっこをしたいだよ」と何だか情けない顔で言うから、急に可哀そうになった。意識して表情を和らげ「何だ、おしっこか。裕美でなくたって、いつも俺がやらせてやるじゃん」とポータブルトイレを引き寄せた。裕美の体調が悪いときは俺がやるから、近頃だいぶこの作業も慣れてきた。右腕で抱え上げて左手を尻に回し、パジャマのズボンとオムツを一気に太腿まで押し下げれば、婆ちゃんも心得てすとんと便座に腰を下ろす。肩に半纏をかけ、膝掛を巻いてやったら「有難う」と言った。...
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