婆ちゃんは静かだった。夕飯を少しだけ食べてすぐに「寝る」と言った。特別具合が悪いわけでもないらしいが、昨夜が嘘のように静かな一日だった。帰りの車内で裕美が「昨夜酷かったからね、気持ちが休まる薬を少し使ったって言ってたよ」とポツリと言った。「そうか、怪我でもされたら困ると思ったずら」。「いいのか悪いのかね」と言うから俺も「いいだか悪いだかなあ」と返した。家までそのまま黙って帰った。いつものスーパーで買った握り寿司と酒少々が元日の夕飯だった。寿司折りには小さな「寿」の熨斗と水引が掛けてある。値段もいつもより2、3割高めのようだった。...
このページは有料会員限定です。紙面併読コースまたは電子版単独コースに登録することで続きをご覧いただけます。