ホーム
最新
山梨
全国・海外
スポーツ
Eye
安心・安全情報
おくやみ・催し・人事
写真・動画
分かる・知る
ビジネス

<86>登園しぶり 楽観視は禁物

2017年01月25日
心から笑ってる?

心から笑ってる?

 保育園・幼稚園や学校に行くのをとても嫌がる子どもがときどきいる。いわゆる登園しぶり・登校しぶりだ。朝、なかなか起きない、支度しようとしない、頭痛や腹痛を訴えて休みたがる、などの態度をとる子どもを、親は何とか言いくるめて、やっとの思いで送り出す。ところが、園や学校で案外子どもは楽しそうに過ごしている。親が担任に相談すると、「園(学校)では楽しそうだから、大丈夫ですよ。だから、頑張って送り出してください」と言われて終わってしまう。
 このような相談を親から受けたとき、僕は必ず次のことを確認する。「お子さんは、登園(校)しぶりだけでなく、『帰宅しぶり』もありますか?」と。実際には、登園しぶり・登校しぶりのある子どもが帰宅を嫌がるということは、めったにない。この場合、園や学校はできれば行きたくない、家にいる方がよい、という意味だと解釈するのが自然だろう。しかし、なぜか担任の先生は「園(学校)で楽しく過ごして、充実した気持ちで帰っているから大丈夫」と楽観視することが多い。
 社会人でも、全く気が進まないけれどもどうしても受けなければならない研修が、ときどきある。初対面の人たちとグループ・ディスカッションをやることがわかっているときなど、行く前は憂うつでたまらない。仕事だからと腹をくくり、行けば和やかに研修を進めるために笑顔を作って参加する。でも、終わったらせいせいして、早々に退散する。口先では「楽しかったから、また来ます」などと言うが、帰ったその後は義務でもないのに自分からまた受けようとはしない。このように、その場では楽しそうにしていても、心から楽しめてはいないということは、大人でもよくあることだ。
 他者によい印象を与えるため、本心とは別に笑顔を作ることを、「営業スマイル」という。登園しぶり・登校しぶりするのに園や学校で楽しそうにふるまう子どもたちは、まだ小さいうちから営業スマイルを身につけている。売り上げを伸ばすためと思えば頑張れるかもしれないが、何も目標がないのに「とにかく平和に時間を過ごし、一刻も早くその場を逃れたい」と思いながら笑顔を作り続けることを連日繰り返していると、いやになるのも当然だ。登園しぶり・登校しぶりのある子どもがいたら、いくら園や学校で楽しそうに見えても、担任は大丈夫と思ってはいけない。園や学校がその子にとって通いたくなるような魅力のある場になるよう、最大限の努力が必要だ。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します