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<81>「虐待の芽」親が認識を

2016年11月09日
将来の夢はいろいろ

将来の夢はいろいろ

 皆さんが親になったとして、赤ちゃんが生まれた直後や1~2歳の誕生日を迎えたときのことを想像してほしい。記念にわが子にメッセージを送るとしたら、皆さんならどうするだろうか? 「元気に育ってね」などのメッセージは多いだろう。「おりこうさんになってね」もあるかもしれない。では、「お父さんお母さんに迷惑をかけないでね」はどうだろうか? ちょっと違和感があるのではないか。
 親から頻繁に暴力を受けていた子どもの資料を見ていて、出生時や1~2歳の誕生日に「親に迷惑をかけないでね」というメッセージを親が書いていたのを見て驚いたことがある。「迷惑をかけるな」という言葉からは、生活が親中心で、それを子どもが邪魔する場合は力で制圧するぞ、という姿勢が見て取れる。
 親も人間なので、わが子に対して抱く気持ちもさまざまだ。自分の身は顧みず、献身的・無条件にわが子の幸せを願うような理想的な親ばかりではない。子どもを支配し、親に服従させようという気持ちが強い親もいる。子どもには親と異なる独自の意志があり、それを主張することは当然のことなのだが、それを絶対君主である親への反抗とみなし、「しつけ」と称して暴力で制圧しようとするならば、それは虐待の一つの形である。
 ところで、「おりこうさんになってね」というメッセージはどうだろうか? 言葉こそ柔らかいが、「おりこうさんでいること」とは「大人に迷惑をかけないこと」とほぼ同じではないか? わが子に「おりこうさんになってね」と伝えている親の心の中にも、子どもを自分の思い通りにしたいという思惑が見え隠れする。将来は自分の仕事を継いでほしい、自分と同じ趣味を持ってほしい、などと子どもに夢を抱く親は少なくないが、そのような気持ちの中に子どもの自由意志を侵害する側面があることに、われわれは敏感である必要がある。実際、子どもの意向を全く無視してレールを敷いて、そこからはみ出ることを許さないという親をときどき見かける。たとえ暴力でなくても、子どもの受ける心理的な圧力が強ければ、「心理的虐待」である。このように考えると、多くの親の心の中に、子どもへの虐待の芽がわずかながらも潜んでいることに気づかされる。
 子どもは親の奴隷ではなく、自分の意志を持つ1人の人間であること、でもいまは親の庇護が必要であること、このことをそれぞれの親がしっかりと認識できるよう、啓発していく必要がある。11月は「児童虐待防止推進月間」だ。(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します