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<78>異なる価値観、優先順位

2016年09月28日
行列もなんのその

行列もなんのその

 今の若者は、ちょっと壁にぶつかっただけですぐに諦める、などと言う大人を時々見かける。そんなセリフを言う大人に限って、自分もまたちょっと壁にぶつかっただけですぐ諦める人物であることに気づいていない。例えば、食事に行った店に長い行列ができているのを見ると、あっさり諦めてすぐ入れる店を探す。子どもが熱中しているゲームを借りて自分もやってみるが、うまく操作できないとすぐやめてしまう。
 このように言うと、反論する人もいるだろう。食事なんて、どこで食べてもよい。ゲームなんて、大して興味がない。だから、そんなに頑張らなくてもよいのだ。大事な仕事では壁にぶつかってもくじけずに頑張れる、と。では、若者たちの言い分はどうだろう。勉強なんて何の役に立つのかわからないから、頑張っても意味がない。でも好きなゲームなら、難しい場面でも何度もトライして、いろんな工夫を考え、ネットで攻略法を調べて、クリアできるまで絶対に諦めずに頑張れる。
 こうして比べてみると、大人も若者も言っていることは全く同じだ。壁にぶつかってもくじけずに頑張り通せることと、ちょっとした壁ですぐに諦めることの両方がある。その対象が異なるだけだ。身体は一つなので、すべてのことに全力をつくし、自分が直面するすべての壁に対してくじけずに真正面から取り組んで頑張り通すわけにはいかない。必然的に、人は自分がやることに対して、「壁にぶつかってもくじけずに頑張ること」から「ちょっとでも壁があったら全く努力せずすぐに諦めること」まで、優先順位を作ることになる。
 何に対してどんな優先順位をつけて臨むのかは、人それぞれだ。その人にとって価値が高いものや好きなことは、どんなに困難があっても乗り越えてやりたいと思うことが多いだろう。その人にとって価値が高くないし興味もないことは、ほとんどの場合、優先順位が低い。それをやらないと危険を感じる場合(脅迫されている場合など)や、生活が破たんする場合、将来の目標が失われる場合(落第や受験失敗など)、社会的信用が失墜する場合などは、嫌々ながらも壁を乗り越えようと頑張るかもしれない。でも、そのような理由で頑張れるのは一時的に過ぎず、嫌々頑張っている状態が続くと心を病んでしまう。
 子どもが壁にぶつかるとすぐに諦めてしまうのは、他に高い優先順位があるからかもしれない。あるいは、すでに心を病んでいるのかもしれない。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)