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<75>健診はテストではない

2016年08月10日
大きくなーれ

大きくなーれ

 子育てしたことのある人ならおそらくほとんどが経験しているのが、「乳幼児健康診査(乳幼児健診)」だ。母子保健法により、市町村は「満1歳6カ月を超え満2歳に達しない幼児」に対する1歳6カ月児健診と、「満3歳を超え満4歳に達しない幼児」に対する3歳児健診を実施しなければならない。その他、ほぼすべての市町村において3~4カ月児健診が実施されている。
 名前からもわかるように、もともと乳幼児健診の主要な目的は、子どもの健康状態の把握と、乳幼児期に生じやすい病気などの早期発見だ。育て方を間違えると大人になって深刻な生活の支障をきたしてしまう発達障害なども、乳幼児健診を活用すると早期発見が可能だ。私が長く仕事をしてきた横浜市のように、30年以上前から乳幼児健診を発達障害の早期発見の場として活用し、早期支援の成果を上げている自治体もある。近年では、核家族化や少子高齢化によって子育て家庭が孤立しがちであることから、「子育て支援」も乳幼児健診の重要な目的に加えられている。孤立した親が子育ての悩みから虐待に至ったりしないよう、地域ぐるみの子育て支援のきっかけとして乳幼児健診を活用するのである。
 乳幼児健診では、医師や保健師などが、子どもの健康状態、運動・言葉・対人関係などの発達、情緒面の状態などについて、子どもの観察と親への問診によって確認する。健診を行う側は子どもの状態を淡々と観察し、親の悩みを把握するだけである。ところが、健診項目を事前に入手して家で子どもに練習させる親や、本当は悩みがあるのに問診では黙っているという親が、ときどきいる。乳幼児健診を「親の育児力テスト」と誤解しているのである。子どもの病気や発達の異常のほとんどは、親の育て方が原因ではない。むしろ、健診でわかった子どもの特性をその後の子育ての工夫の手がかりとして生かすことが重要だ。子育てで悩むことは決して恥ずかしいことではない。悩みを相談したことによって親の気持ちが安定し、子育てに展望が持てたという事例を、僕はたくさん知っている。
 意欲的に乳幼児健診を行っている地域では、健診後に何らかのフォローアップを受ける子どもの割合が実に4分の1~3分の1に上ることが珍しくない。健診を契機に子育て相談を受けることは、決して特別なことではないのだ。乳幼児の子育て中の方やこれから子育てを始める方は、乳幼児健診を自分たちの相談の場として積極的に活用してほしい。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します