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<73>あいさつより大切なこと

2016年07月13日
タッチで「おはよう!」

タッチで「おはよう!」

 地域にもよるだろうが、公立学校の先生たちは総じて元気よくあいさつする人が多い。仕事柄いろんなところで研修会の講師を務めるが、公立学校の先生たちの研修会では必ず全員が大きな声で一斉にあいさつを唱和する。朝は「おはようございます」、昼は「こんにちは」、夜は「こんばんは」と、子どもたちが教わるあいさつそのものだ。他の大人の社会では、「おはようございます」はともかくとして、皆で一斉に「こんにちは」や「こんばんは」とあいさつする習慣は今どきあまりない気がする。
 学校の先生たちは、生徒にもあいさつを奨励する。そのこと自体、決して悪いことではない。誰かと会ったときや別れるとき、にこやかにあいさつするのは互いに気持ちよいものだ。ただ、中にはあいさつをしないと次のことをやってはいけないと考える人がいる。そのような人が好きな言葉が「あいさつが基本」だ。
 世の中にはアガリ症の人、大声が苦手な人、人見知りが強い人など、いろんな人がいる。他のことなら何でも抵抗なくできるのに、大声の元気よいあいさつだけは苦手という人もいる。そのような人たちにとって、「あいさつが基本」と言われるのは大変困ることだ。
 あいさつは、そこまで重要なことなのだろうか? あいさつは上手だが仕事はサボってばかりという人もいる。僕はそういう人を何度も見てきた。逆に、あいさつは苦手だが仕事は真面目にこなす人もいる。人物として評価すべきなのはトータルな人柄や仕事の内容であって、決してあいさつではない。外国映画などを見ていると、あいさつが案外あっさりしている国も多い。日本人は総じてあいさつが過剰だと感じるのは僕だけだろうか? ためしに皆さんが誰かと会ったとき、特に別れ際に「失礼します」「じゃあまた」などの言葉を何回発し、お辞儀を何回するか、数えてみるとよい。2~3回ではすまないはずだ。
 あいさつを重視する人の中には、「元気よくあいさつする人に悪い人はいない」とまで言う人がいるが、本当だろうか? どちらかというと、うわべのコミュニケーションの巧みさで人をだます輩も多いように思う。あいさつが苦手な人が、悪人とも限らない。人見知りが強く世渡り下手だが実直な人も多い。そのような人の内に秘めた真面目さ、正義感、才能をうまく引き出すことの方が、あいさつを無理強いすることよりも大切ではないだろうか。
 あいさつは、基本とは限らない。「あいさつは応用」という人だっている。他のことをたくさん学び、後から少しずつあいさつを上達させるという学び方だって、あっていい。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します