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<71>子どもの自由意思を尊重

2016年06月08日
自分で決めるから

自分で決めるから

 限られた時間の中で何かをやるということは、代わりに何かをやらないか後回しにすることでもある。何を優先するのか、皆の意見が一致するときもあれば、対立するときもある。
 多くの親が頭を悩ませるのが、何かをやらせたいと思っても子どもがやろうとしないことである。裏を返せば、子どもは他にやりたいことがある。親側からみると「子どもが親の言うことを聞かない」という話だが、子ども側からみると「親が子どもの言うことを聞かない」という話である。このようなとき、強権発動して親の指示に従わせることも多いと思う。乳児のしつけの一部では仕方ないが、幼児期以降にいつまでも親が強権発動していると、子どもが困難にすぐ挫折してしまう人に育つ可能性がある。
 人は、モチベーションの高いことほど頑張るものだ。ゲームが大好きな子どもは、何を差し置いてもゲームを優先する。ゲームの中で難しい場面に遭遇しても、かえってやる気が出たりする。好きなこと、目標がはっきりしているものであれば、多少の困難は意欲的に乗り越える。そのような子どもに対して、たとえば宿題をさせるために親がゲームを取り上げると、親は子どもにとって「どんなに頑張っても克服できない壁」になってしまう。これが何度も続くと、子どもは自分が無力で困難に打ち勝てない人間であるという意識を植え付けられる。「わが子には世間の荒波にもまれても耐えられるようになってほしい」などと言う親によく出会うが、本気でそう思うのなら、子どものやりたいことを無理やりやめさせようとしてはならない。強権発動を乱発する親は、自分自身が子どもにとって克服できない荒波そのものであり、ときに恐怖の対象となってしまう。
 もし自分の意志を強くもち、困難にも克服しようと立ち向かえるような人にわが子を育てたいと思うなら、親は子どもの自己判断力とモチベーションを育てる努力をすべきだろう。なぜ今子どもがそれをやるべきか、やらないとどうなるか、子どもがやりたいことはなぜ今ではだめなのか、いつならばやってよいのかを丁寧に説明した上で、それでも最終的には子どもの自由意思による決定を保障する必要がある。そのときはいやでも長期的視点に立てば今やるべきであること、やりたいことが今ではないが後でならできることを子どもが納得すれば、自己決定できるはずだ。あくまで自由意思であって、恐怖による押しつけとならないよう気をつけなければならない。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します