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<69>「走るな」は親の保身?

2016年05月11日
しっかりと…

しっかりと…

 親が子どもを叱ったり注意したりするのは、子どもがいけない行為をしたと思ったときである。これには、どなたも異論はあるまい。では、叱ること、注意することの目的は何だろう? 「いけない行為をやめさせること」と言う人が多いと思う。
 ここで、次の場面を思い浮かべてほしい。人通りが多い場所を歩いている親子連れがいる。突然、子どもがうれしそうに走りだす。親は声を荒らげて「走らないで!」と声をかけるが、子どもはそのまま走っていく。誰でも見たことがある、あるいは身に覚えのある光景だ。親が注意しているにもかかわらず、子どもは行動をやめない。でも親も、それ以上に、たとえば駆け寄って子どもを捕まえて止めることなどはせず、後ろから平然と歩いていたりする。このような場面では、親が叱ることや注意することの目的は、いけない行為をやめさせることではないように見える。
 このような叱り方や注意の仕方をするときの親の目的は、「子どもが言うことを聞かないだけで、自分は親としてやるべきことをちゃんとやっている」と他者にアピールするための、いわば「アリバイ作り」だと思う。子どもの行為を本気でやめさせるつもりなどない。このようなやり方で叱責や注意をしている親は、「決してそんなつもりはない」と言うだろう。でも、もし本気でやめさせたいのであれば、声かけだけして後ろからのんびり歩くようなことはせず、身体を張って子どもを止めようとするはずだ。もっと工夫のできる親であれば、子どもが浮かれて走りだしそうな場所に行くときは事前に「走らないように」とくぎを刺しておくか、口頭の注意ではまだわからない子どもであれば、その場所にいるときはあらかじめ手をつないでおく。手をふりほどいて走りだすような子どもであれば、そのような場所に連れて行かない。それが、本気というものだ。
 面白いことに、声かけしかしないというのが本当に親のアリバイ作りであることが、時々明らかになる。走っていた子どもが何かにぶつかったり転んだりして泣くと、後から追いついた親は決まってこう言う。「ほら、だから走るなって言ったでしょ?」。つまり、親はやるべきことはやったが、それを聞かなかった子どもが悪い、と自分を正当化して子どもに責任をなすりつけているのだ。親が自分のことを本気で心配しているかどうかを、子どもは敏感に察知するものだ。親が保身と責任転嫁ばかりやっていると、子どもは親を信じられなくなってしまう。(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)

「ドクター本田のにじいろ子育て」は第2、4水曜日に掲載します