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<65>差別解消は個性を大事に

2016年03月09日
安心して勉強したい

安心して勉強したい

 人種、性別、障害の有無など、あらゆる個人差を超えて、すべての人たちが同じ社会で生活する環境づくりを目指すことを、「インクルージョン」という。何か障害のある子どもが同じ教室で皆と一緒に授業に参加することなどが、これに当たる。
 例えば、歩くことが難しいために車いすが必要だが、勉強は標準的な進度で行える生徒がいることを想定してみよう。校舎に段差があるために車いすでの移動が難しければ、段差を解消し、エレベーターなどを設置するなどの対策をとる。これによって、その生徒にとって正当な学習の権利が保障される。このような対策を「合理的配慮」という。
 「合理的配慮」の例をもう一つ挙げよう。言葉の理解や教科の学習能力には支障がないにもかかわらず、文字を読む能力だけが特別に苦手という人がいる。発達障害の一種で「ディスレクシア」という。ディスレクシアの生徒は、教科書や試験の問題文を誰かに音読してもらえば、内容を聞いて理解し、問題を解くことが可能である。そこで、授業や試験では、音読したものを聞かせるという対応をすればよい。センター試験などでは、すでにこのような合理的配慮が行われている。
 今年の4月から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(「障害者差別解消法」と略)が施行される。この中で、合理的配慮の提供が公的機関・事業所(国公立学校を含む)に義務づけられ、民間事業所(私立学校を含む)には努力義務が課せられた。何らかの障害のある生徒に対して、その学校でできうる限りの合理的配慮をする義務が、全国の学校に課せられたのである。
 合理的配慮は、何でも皆と同じことをさせることとは違う。どんなに工夫をしても、体育の100メートル走で車いすの生徒を立たせて走らせるわけにはいかない。文字を読むこと以前に物事を理解する力全体の発達が遅い知的障害の生徒では、教科学習を皆と同じペースで行わせることは、車いすの生徒を走らせることに等しい。これを機に、車いすの生徒にとって適切な運動課題とは何か、知的障害の生徒にとって適切な教科学習とは何か、さらには子どもの個性に応じた教育カリキュラムをどのように保障すべきか、議論を深めていく必要がある。
 「障害者差別解消」というと、何でも皆と一緒にすればよいと考える人がいるが、それは間違い。個々の人たちが正当な権利を保障されるために必要な合理的配慮をオーダーメードで考えていくことが、これからの重要な課題である。(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します