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<54>こころの中 気にかけて

2015年09月23日

 一般に、病院や相談機関に行こうと思うのは、何か問題があると感じた時である。何も問題がなければ、そんな所へ行こうとは思わない。子どものこころの診療も同じだ。ただし、大人の場合と異なることがある。子どもの場合、周りの大人の誰かが問題を感じなければ受診には至らないことが多いのだ。
 では、周りの大人が子どもの問題を感じるのはどのような時だろう? 1つめは、多くの子がやることをその子だけがやらない場合だ。発達が遅れている、あがり症である、興味がない、などの理由が考えられる。2つめは、多くの子がやらないことをその子だけがやる場合だ。授業中に一人だけ着席せず教室内をうろうろする、場にそぐわない不謹慎な発言をする、すぐカッとなって暴力をふるう、などの場合が考えられる。保護者は、他の子がやることをわが子だけがやらないと心配になることが多く、集団活動を運営する教師や保育士は、他の子がやらないことをやる子どもに目が行くことが多い。
 しかし、よく考えると、大人に見えるのは子どもの行動の異常であって、こころの内面ではない。他の子どもたちと表面的には同じように振る舞っていながら、こころの中では多くの子と異なることを考えたり感じたりしている子どもがいる。違和感がありながらも我慢しているため、大人には問題が見えにくいのだ。思春期に子どものこころの診療の場を訪れる子どもたちの中に時々みられる「小さい頃は何も問題なく、手がかからなかった」と言われる子どもたちだ。学童期以前の子どもは、思い通りにならない時は機嫌を損ね、声高に主張し、だだをこね、泣くのが当然だ。それができず、誰にもつらさを相談できずに年月を重ねると、徐々に自信や意欲が低下していく。そうして思春期前後になると、蓄積したストレスに耐え切れず、外に出られなくなったり、不安やうつなどの精神症状が出現したりして、はじめて他人の目にも問題が明らかとなる。このタイプの問題が、実は最も深刻になりやすい。早くから問題が出現している子どもに比べて、対応が後手に回りがちとなるからだ。
 「問題がない」「手がかからない」「聞き分けがよい」などは、大人からみて子どもが管理によく従うという意味にすぎない。子どもの健康な成長を保証するという点で、これらはむしろ黄信号だ。大人からみて管理しやすいかどうかではなく、子ども本人の視点に立って生活を楽しめているかどうかを、常に気にかけておきたい。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)