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<51>手伝いの機会 与えよう

2015年08月12日

 幼児期の子どもは、何かをまねすることが大好きだ。ママゴトで母親のまねをしてみたり、電車ごっこで運転手や車掌のまねをしてみたり。この時期の子どもたちにとって、本格的なまねのできる最大のチャンスは、家の仕事の手伝いだ。なにしろごっこ遊びと違って、大人と同じことを本物の道具を使ってできるのだ。手伝いは、幼児期の子どもにとって最も魅力的な遊びの一つといえる。
 幼児期の家事の手伝いは、子育てにおいても意味がある。子どもが将来生きていくために必要な力を身につけるだけでなく、親子が一緒に活動することによって、親子間の愛着、信頼、安心感の形成を促進し、情緒豊かなパーソナリティーを形成する土台づくりにもなる。
 近年、子どもが家の仕事を手伝っていない家庭が増えている気がする。親たちは、子どもが手伝うことを煩わしいと思うのかもしれない。家事の手伝いをさせる暇があったら教科の勉強をさせたいと思っている親も多い。子どもが教育を受ける権利の保障や経済的搾取の予防などの観点から、子どもに労働を強いることは国際条約で禁止されている。しかし、国際条約でも子どもが家事を手伝うことまでは禁じていない。むしろ家事の手伝いは当然行われているという前提のもとで、それ以上の過剰な強制労働を禁じ、読み書きや計算などを教わる機会を保障するということなのだ。
 今のわが国でみられているのは、子どもたちが家事を教わる機会がないままで教科の勉強だけがどんどん進められているような本末転倒の事態だ。加えて近年では、子どもたちがゲームやインターネットに多くの時間を費やすようになり、学年が上がれば上がるほど、子どもたちが現実生活から遠ざかっている。このような時代だからこそ、子どもに手伝いの機会を保障する必要があるように思う。
 もちろんまだ子どもなので、はじめはやる気満々でも、すぐに飽きて遊び始めてしまう。あるいは本人は真面目にやっているつもりでも、大して役には立たず、かえって足手まといになる。それでも全く構わない。この時期の手伝いは、子どもを労働力として使うことが目的なのではなく、少し背伸びして大人の世界を垣間見る体験をさせることと、親子の安定した関係を形成することが目的なのだから。そのような目的を達成するためには、手伝いは子どもがやりたがるものに限定し、やったら必ず褒める、途中で飽きてやめてもそれ以上は強要しない、という態度で接することが重要だ。
(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します