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<50>苦手な気持ち理解する

2015年07月22日
得意。不得意。

得意。不得意。

 友だちが少なくて悩んでいる子どもがいるとする。その子どもが抱えている問題を改善させるにはどうすればよいだろう。
 多くの人たちは、「こうすればよい」「ああすればよい」と、友だちを増やすための助言をしようとする。しかし、そのようなやり方はなかなかうまくいかない。それは、助言の多くが「こうすればうまくいった」という自分の経験に基づいているからだ。友だちをつくることに苦手意識をもっている子どもにとって、うまく友だちをつくれた人のやり方をまねすることは、とても難しい。
 勉強などで何か苦手なことがある人は、それが得意な人から教えてもらったり助言をもらったりするのが一般的だ。教師だって、通常は得意な科目を専攻するものだ。しかし、得意な人がよい教師になるとは限らない。苦手な人がなぜ苦手なのか、どこでつまずくのか、それを苦手とする自分自身にどんな気持ちを抱いているのか。これらは、得意な人にはピンとこないかもしれないからだ。「苦手な人」と、「苦手な人の気持ちがわからない人」とでは、コミュニケーションがかみ合わない。
 友だちが少ない子どもへの対応も同様だ。大人はつい「どうやって友だちをつくるか」のハウツーを助言してしまう。しかし、友だちづくりが苦労なくできる人に有効な工夫が、友だちをうまくつくれない子どもにもそのまま適用できるとは限らない。友だちが少ない子どもは、友だちが少ないという問題と同時に、「そのことで悩んでいる」という問題も抱えている。「自分に何か問題があるから友だちができないのではないか?」などと、友だちが少ないことの原因を自分の欠点に求め、自信を失い、ますます引っ込み思案になっていく。友だちづくりのハウツーだけ助言されても、それを実行することは困難であることが多く、自分のつらさをわかってもらえないという気持ちだけが残る。
 苦手な人に教える場合、得意な人の論理を振りかざすのではなく、教える側がまずは苦手な人の気持ちをよく理解しようとすることが重要だ。どんなに得意でも、苦手な人の気持ちがわからない人は、よい教師、よい助言者にはなれない。むしろ、自分にも苦手なものがあった人、いまも苦手なものがある人の方が、つらい気持ちを理解することはできる。何かを子どもに教えたり助言したりしようとする際には、まずは「その子どもが苦手でつらいと思っている気持ちを自分はわかっているか」と自問自答しておきたいものだ。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します