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<49>成長のタイプ見極める

2015年07月08日
好きこそ物の…

好きこそ物の…

 大器晩成型の人にとって、受難の時代だと思う。
 「何かを始めるのならば、少しでも早い時期から始める方が良い」という風潮がある。「早期教育」あるいは「早期英才教育」をうたい文句にした幼児教室は、都市部では実にたくさんある。習い事も幼児期からという家庭が多いだろう。
 スポーツや音楽の領域などは、実際に一流のプロの多くが幼少期から始めているところをみると、早く始める方が上達しやすいのかもしれない。ただ、幼児期に始めたからといって、全員がプロになれるわけではない。早く始めても、向いていなければかえって嫌いになってしまうこともある。
 世の中には早熟な人もいれば、大器晩成型の人もいる。早熟の人には「天才」「秀才」タイプが多く、大器晩成型の人は多彩な経験を経て性格に深みを感じるような大人になっていく。どちらが良いというわけではなく、いろんなタイプの人がいるのが健康的な社会だ。
 大器晩成型の子どもは、小さいときにはなかなか意欲を持たないが、ある程度大きくなってからやる気が出てくる。まだ意欲もない時期から無理に早期教育を押しつけると、意欲が消失してしまうだけでなく、むしろ嫌いになってしまう。何もしないでおけば後でやる気になったかもしれないのに。無理な早期教育は、大器晩成型の子どもに対しては将来の成長の芽を摘んでしまう可能性がある。そして悲しいことに、芽を摘まれた人たちは、自分が本当は大器晩成だったのかもしれないことに気づくことすらなく一生を終えるかもしれない。
 「少しでも早くから」というキャッチフレーズは親をひきつけやすいので、早期教育はビジネスになりやすい。しかし、「今は何もせず、時期が来るのを待ちましょう」というのでは、ビジネスにならない。早熟な子ども向けの教育法は開発しやすいが、大器晩成型向けの教育法は市場原理に乗りにくい。
 本当の教育のプロフェッショナリズムとは、一人ひとりの子どもの成長のタイプを見極める力にあるのだと思う。すべての子どもに均一な教育プログラムを行おうとするのは、プロではない。大器晩成型の子どもにも早期教育があるのだとすれば、「早ければ早いほどよい」のではなく、「この子には、この教育は後回しにした方がむしろ伸びる」という的確な見通しを親に示すことだろう。早期教育をうたう人たちの中に、自信を持って大器晩成型の子どもの将来の成長の道筋を親に示すことのできる人がどのくらいいるのだろう?(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します