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<48>親と子どもの関係観察

2015年06月24日

 子どもの精神科を初めて訪れるときは、親が子どもに付き添うことが多い。子どもが小学生以上の場合、僕はまず親子に並んで着席してもらった上で、最初の数分間は子ども本人と話すことにしている。本人の様子を把握するためであることは、言うまでもない。しかし、重要な観察ポイントは他にもある。それは、同席している親と子どもとの関係である。
 もし子どものこころの問題を親が本当に心配し、何とかしたいと望んでいるのであれば、親は子どものありのままの姿を医者に見せたいと思うはずである。そのような親は、子どもが医者と話している間、傍らで黙って座っている。子どもが答えに窮して親の方を向いたときだけは、補足的な説明をしたり、子どもに手短に説明をして子ども自身で説明することを手伝ったりする。わが子の問題を医者が的確に把握できることと、子どもが安心して自分の言葉で話せることに親が留意できていれば、問題ない。
 ところが、子どもに気になるところがあっても、それを医者に見せようとせず、むしろ懸命に隠そうとしているようにすら見える親が意外に多い。子どもがあいさつせずに入室したら「あいさつしなさい」と強く促す。子どもがうまく説明ができないと脇から細かく訂正する。自己紹介を兼ねて名前や学校名などを紙に書いてもらっていると、横からのぞき込み、誤字や書き順の間違いをいちいち指摘してやり直させる。熱が出て苦しんでいる子どもを検温直前に水風呂に入れて身体を冷やすような感じだ。
 逆に、僕が子どもと話している間、ずっと仏頂面で黙り続けている親もいる。説明に窮した子どもが親の方を見ても、そっぽを向いて無視し続ける。子どもは結局うまく説明できず、緊張が増してしまう。僕も問題が何なのかを把握しきれない。
 このような親の多くは、わが子の心配よりも、精神科に連れて行くことの不本意さを強く感じている。その根底にあるのは、「親のしつけ不足をとがめられないか」という不安であり、さらにその根底にあるのは、「しつけとは子どもを親の命令に従わせることだ」という子育て観である。だから、子どものこころの健康よりも親の不安解消を優先してしまうのだ。ことさらに問題を隠そうとしたり、子どもの問題に無関心な態度をとろうとしたりする場合、親も、いや親の方が治療を必要とすることが多い。ただ、そのような親に限って自分の悩みを人に相談することも苦手であり、受診や治療につながりにくいのが悩みの種である。(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)=第2、4水曜日に掲載します