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熊本の支援センターを訪ねて
<上>サポステと一体運営

2015年5月5日
NPO法人「おーさぁ」の職員として働く、ひきこもり経験者の赤星講平さん。同NPOはサポステと支援センターを連携させ、「支援の連続性」を図っている=熊本市内

NPO法人「おーさぁ」の職員として働く、ひきこもり経験者の赤星講平さん。同NPOはサポステと支援センターを連携させ、「支援の連続性」を図っている=熊本市内

息の長いサポート構築

 全国の自治体で続々と設置されている「ひきこもり地域支援センター」。ひきこもりに特化した窓口を設けることで支援体制の強化が期待されるが、山梨県内では開設の動きはない。一方、昨年、今年と相次いで支援センターを開設したのが熊本。市と県が、ひきこもり当事者の社会復帰に向けた活動に取り組んでいる。施設の役割と意義を探ろうと、現地を訪ねた。〈木下澄香〉

 人口約70万、2012年に政令市になった熊本市。中心を路面電車が走る大通りの道沿いに、市総合保健福祉センター「ウェルパルくまもと」のビルがある。昨年10月、ビル3階に開設されたのが、熊本市ひきこもり支援センター「りんく」。市内に住むひきこもり当事者や家族の相談、支援を行っている。
 同市の赤星講平さん(32)は約3年間のひきこもり生活を経て、昨年から同センターを運営するNPO法人「おーさぁ」の職員として働いている。支援センターとは別の場所にあるNPOの事務所で、経理や土産物売り場を管理するのが主な仕事だ。
 大学卒業後、25歳でアメリカの大学院に進学。思い切って渡米したものの、心身の調子を崩し、1年で帰国した。復学にも就労にも気持ちが向かず、実家にこもるように。父親の知人の紹介をきっかけに、県の精神保健福祉センターから、就労を支援する市の地域若者サポートステーション(サポステ)に通うようになった。気持ちはなかなか上向かなかったが、スタッフの支えを受け、時間をかけて今の職に就いた。

●開設半年で200人

 「おーさぁ」は支援センターより前に、2007年から市のサポステの運営を受託。多い時で年間延べ6千人が利用するサポステで長年支援に携わり、現在は支援センター所長の伊津野晋平さん(36)は「就労が難しいひきこもりの相談をサポステで受けるジレンマが、ひきこもり支援センターの必要性を導く根拠になった」と言う。
 ひきこもりに関する相談が、引きも切らず寄せられていたサポステ。定期的に開いていた会議には県と市、民間団体、ハローワークの担当者が参加していた。13年度には高校や大学に出向き、意見を交換。若者が抱える問題と既存のサービスを照合し、至った結論が「学校も、サポステも、現状ではどこもひきこもりに手が届かない」。共通の認識のもと、支援センターの14年度開設に向かった。
 支援センターでは相談業務のほか、週2日、ひきこもりの本人向けのプログラムを用意。開設から半年で約200人が訪れ、一人一人に応じた社会参加への道をサポートしている。サポステに移行した人や、2カ所を併用している人も。「おーさぁ」はスタッフが支援センターとサポステの業務を兼務するなどし、利用者の不安を軽減させる工夫をしている。

●出て行ける場所

 支援センターとサポステを連携させ、息の長い効果的な支援を可能にする。「大事なのは支援の連続性」と語る伊津野さん。「サポステだけではひきこもりは解決しない。いきなり就労を求めることのない施設があることで、当事者がまず支える側と結びつくことができる」と支援センターの存在意義を強調する。
 支援される立場から支援する立場へ。赤星さんは現在、キャリアカウンセラーの資格取得を目指して勉強を続けている。「ひきこもりの当事者にとって状態や環境に応じて、サポステや支援センターなど『出て行ける場所』が用意されているのはありがたい」