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<1>支援へ国会議連 活動8年…国動かす

2015年4月19日

 時代の変化とともに出現する社会的な課題に対応するため、この国では国会議員が法律をつくり、その法の下で官僚が制度をつくる。内閣府調査によると、全国に推計70万人いるとされる、ひきこもりの当事者。「氷山の一角」と指摘され、長期・高年齢化が深刻な問題となっているが、特化した法令は存在しない。選挙で勝ち上がってきた議員と、高学歴とされる上級役人に、ひきこもりはどのように映るのか。第7部は政治と制度の関わりに焦点を当て、経緯と現状、展望を探る。〈「扉の向こうへ」取材班〉

 「ひきこもりはニートや不登校と別問題。それぞれの対策を講じるべきです」。自民党の土屋品子衆院議員(63)=埼玉13区=は、「ニート」の対策予算を協議する党内の会議で、同席した議員や省庁幹部に訴えた。2002年ごろのことと記憶している。
 「ひきこもり」の言葉自体が、あまり知られていない当時。ほかに話を持ち出せる議論の場が見つからなかった。
 周囲の反応は冷ややかだった。「どこが違うんだ」「おかしなことを言い出すな」。無言で向けられた視線が、そう告げていた。

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 「通学せず、仕事に就かず、職業訓練も受けていない」という意味の英語の頭文字を並べた「ニート(NEET)」。60万人を超えると言われ、労働力不足や生活保護受給者の増大などの懸念から、緊急性の高い課題として対策が求められた。
 また、新潟県で自宅にこもっていた男が関わった少女監禁事件を契機に、社会との関係を断って生活する人の潜在的な存在が知られるようになった。「社会参加を放棄し、仕事に就かない」ニートと、「社会参加したいが仕事に就けない」ひきこもりは、心境や置かれた環境が異なる。だが、議員の多くが「怠け者」と受け止めた。
 土屋議員自身、ひきこもりの存在を知ったのは、地元の選挙区の住人で、後に「全国ひきこもりKHJ親の会」を発足させた故奥山雅久さんからの相談がきっかけだった。「30過ぎの子が家から出られない」。しかも、同じ悩みをもつ親が身近に、全国に大勢いるという。
 関係する省庁の職員を呼んで対策の必要性を説いたが、「壁」にぶつかった。「不登校の問題。担当は文部科学省ですね」と厚生労働省の担当者が言えば、文科省側は「精神障害に起因している。厚労省へ」と押し返す。では、法務省が法的に何らかの対策を考えているかもしれないと聞くと、「われわれの管轄ではありません」とにべもない。
 「このままでは手遅れになる」。対策が講じられないまま多くの大人がひきこもり、ニートと相まってどれほどの働き手が失われるだろうか。

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 危機感が募り、議連をつくろうと思い立った。国会法で、20人を超す国会議員がいれば議員立法を発議できる。議員の間では「議連も20人以上集まれば政府が本気になる」と言われていた。2002年11月、与党衆参両院議員でつくる「引きこもり対策議員連盟」を発足。4人の同志と賛同者集めに奔走した。
 ただ、道のりは平たんではなかった。「本当に考えるべき弱者救済などの問題ほど賛同者は少ない。それが政治の現実」(土屋議員)。票にならないことはしたくない、という政治家の本音が、ひきこもりへの理解を阻んだ。
 当事者や親に話を聞くなどして勉強会を重ね、国会内では異例とも言える、ひきこもりの記録映画の上映会も開いた。親の会と省庁への働き掛けを繰り返し、少しずつではあるが手応えを得られるようになった。議連のメンバーが26人に増えると、厚労省は08年、ひきこもり関連施策を推進する組織を発足。10年に「ひきこもり」の定義を初めて公表、内閣府が全国で実態調査を始めた。
 「やっと一歩を踏み出せた」と振り返る土屋議員。議連発足から8年の歳月がたっていた。