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<40>現実的な進路指導望む

2015年02月25日

 受験シーズンである。もう入学試験を終えて進路の決まった人もいれば、これからが本番と言う人もいるだろう。本人にとってだけでなく、親や教師にとっても気持ちの落ち着かない時期だ。
 学校などで行われる進路相談に関して、以前から気になっていることがある。例えば新中学3年生が担任と面談するとしよう。その生徒の現在の偏差値がA高校のレベルだとすると、担任のほとんどはこう言う。「1年間真面目に勉強すれば、偏差値がもう1ランク上のB高校に届くから、頑張ってB高校を目指しなさい」
 担任はよかれと思って言っているのだが、この発言はおかしい。偏差値とは、その生徒の成績が全体の中で相対的にどのあたりに位置するのかを示すものだ。理屈で言うと、もしその学年の生徒たちが全員同じように頑張って同じ程度にテストの点が上がると、一人一人の相対的な位置は変わらない。つまり、個々の生徒の偏差値は変わらず、結局上位ランクの学校には届かないのだ。先生が「頑張れば偏差値が上がるかもしれない」と言っているのは、成績が下がる生徒がどこか他にいるということが前提なのである。目の前の生徒に「偏差値を上げるよう頑張れ」と言うのは、代わりに誰か別の生徒の成績が下がることを願うことでもある。それは変だ。
 進路の選び方にも個性がある。受験勉強に打ち込んで、当初の学力よりも上のランクの学校を目指そうという人は、確かにいる。でも、制服、校風、部活など、偏差値以外の理由で志望校を決める生徒もいる。もし受験1年前の偏差値で十分合格可能な学校を本人がぜひにと希望するのであれば、何も上のランクの学校を目指させる必要はない。
 親や教師に「もっと上を目指せ」といくら励まされてもうまくいかない生徒を、僕は何人も見てきた。1年間必死で勉強してようやく合格しても、入学後の授業についていけず休学・中退に追い込まれたケースも知っている。直前にならないとどうしても実感が湧かないという生徒もいる。このような生徒たちは、直前の1年間どのくらい勉強したかに関係なく、入試直前の時点での学力で入れそうな学校を選んで受験すればよいのだ。
 進路相談の場で教師がすべきことは、個々の生徒の特性に応じて現実的な進路の選択肢を淡々と示すことだ。ランクアップすればあの学校、現状維持ならこの学校ということを示しさえすればよい。あとは、生徒本人が考えればよいことであって、大人が干渉すべきではない。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します