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<35>心の病気 チックで観察

2014年12月10日
夕暮れの目印

夕暮れの目印

 「チック」という現象がある。突発的に体の一部を動かすことや、声を出すことを繰り返す。体の一部を動かすのを運動チックという。瞬きをする、首を振る、顔をしかめるなど、単純で一瞬の動作の場合もあるが、物に触る、蹴る、飛び上がるといったやや複雑な動作の場合もある。声を出すのを音声チックといい、短い音の声を出す、咳払いする、鼻をならすなど一瞬のものもあれば、意味のある単語を繰り返すものもある。
 チックは、自分でコントロールすることが難しい。親はわが子にチックを見かけると、ついやめるように言ってしまうが、言われた子どもはかえって気にしてしまい、やめられなくなる。ではどうすればよいかというと、本人に指摘するのではなく、チックの種類、程度、頻度に気をつけて観察し、チックによって社会生活に支障が出ているかどうかをまずは検討する。多くは症状が一過性で、社会生活に支障をきたすほどではない。この場合は、放っておいてよい。症状があまりにも頻繁であったり、程度が強かったりして、社会生活に支障をきたす場合には、専門医による治療が必要である。
 チックの見られる人の場合、チックの程度や頻度は、生活上のストレスと強く関連する。ストレスが強いとチックが増え、ストレスが減るとチックも減る。生活にそれほどの支障がない段階であれば、ストレス源を取り除くだけで、薬など飲まなくてもチックを軽減させることができる。見方を変えると、社会生活に支障のない程度のチックは、ストレスのバロメーターとして活用できるのだ。この視点は、意外に重要だ。チック自体を悪い病気と見るのではなく、うつなどのもっと深刻な心の病気の予兆として活用することによって、本格的な心の病気を予防することができる。
 チックの症状が全く見られない子どもに比べて、生活に支障のない程度のチックが時々出没するくらいの方が、ストレスがかかっていることを大人が察知しやすいので、深刻な心の病気を予防しやすいともいえる。この見方は、ストレスによって頭痛や腹痛などの身体症状を訴えやすい子どもたちにも応用できる。こうした症状を「心の弱さ」として押さえこもうとする人がいるが、それは間違い。一見なんの問題もないように見える子どもたちの方が、後で深刻な心の問題が一気に噴出することがあるのだ。生活に支障のない程度のチックや軽い身体症状は、子どもの心の健康を保つためのバロメーターとして活用していただきたい。
 (本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
 =第2、4水曜日に掲載します