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<34>心の揺れを避けないで

2014年11月26日
表になったり、裏になったり。

表になったり、裏になったり。

 思春期は、子どもから大人への移行期だ。「まだ子ども」という側面と「もう大人」という側面が混ざり合う。
 大人に対する気持ちも変化する。「好きだけど、嫌な時もある」「親を尊敬しているが、家でだらしないのは軽蔑する」「口出ししないでほしいけど、困った時には助けてほしい」。このように二つの対立する気持ちを同時に抱いて揺れる心情のことを、専門用語では「アンビバレンス」という。心理学的にいえば、思春期とは大人に対してアンビバレンスがみられる時期だ。
 大人からみると身勝手この上ない。褒めても素直に喜ばずムスッとしているのに、何も言わないでいると「ちょっとは褒めてくれ」と要求する。家族で外出しようと誘っても嫌がるくせに、欲しいものがあると一緒に買い物に行きたがる。よかれと思って助言すると「そのくらい自分でできるから黙っていてほしい」と嫌がるが、放っておくと結局うまくいかずに大人の援助を求めてくる。
 アンビバレンスは相対的だ。相手の出方によって、多くの場合はその反対の方向に気持ちが傾く。例えば、自分の言うことに従わせようとする大人に対しては反抗する。この時期に反抗的な態度が目立つ子どもの周囲には、支配的な大人が多い。「もう大人だから」と言って自立を強く促す大人に対しては、依存したがる。「なかなか自立心が育たない」と親が愚痴をこぼしている場合、実は親が無意識のうちに子どもを突き放しているために、子どもの不安が強くなっているのかもしれない。思春期の子どもたちの性格や行動特性は、周囲の大人たちの子どもへの態度を映し出す鏡なのだ。
 思春期の子どもたちはどうやってもアンビバレンスがつきものなので、これをことさらに避ける必要はない。けれども、アンビバレンスとうまく付き合うコツもある。ひとつは、大人の態度をはっきりさせること。大人の態度があいまいだと、子どもの気持ちの揺れが激しくなり、情緒不安定になる。大人がある方向を明確に示せば、子どもはアマノジャク的に別の方向を向いて安定する。もうひとつは、大人の態度に対してアンビバレンスが出現することを予測しておくことだ。相手は必ずアマノジャクになるということをわかった上で、こちらの態度を決定するのだ。
 親が子どもを大事に思えば思うほど、子どもは親をうっとうしく感じて離れていく。これが実は最も健康的な自立である。これも思春期のアンビバレンスを理解すると納得できる話である。(本田秀夫・信州大付属病院子どものこころ診療部 診療教授)
=第2、4水曜日に掲載します